演題名 便秘症治療薬開始前後 アンケート調査報告
演者名 友愛クリニック
 大湯 恵、山下たみ子、蓑田好子、下山博身
友愛三橋クリニック
 大竹早苗、椎名聖子、廣瀬 悟
学会名 第83回大宮地区透析療法勉強会
開催日 2013年12月19日
開催地 大宮ソニックシティ
便秘症治療薬ルビプロストン(アミティーザ®)開始前後 アンケート調査報告
便秘の原因と要因
 スライドに示すように、透析患者は、水分制限やカリウム制限による食物繊維の摂取不足に加えて、イオン交換樹脂やリン吸着薬の服用により、きわめて便秘になりやすい状態にあります。ある調査によると透析患者の約40%が便秘に悩んでいると言われており、博友会でも34%の患者が便秘症治療薬を定期的に服用しています。
 2012年11月に30年ぶりとなる便秘症治療の新薬、ルビプロストン(以下アミティーザ®)が発売されました。このアミティーザは、小腸での腸液の分泌を増やし、便の水分量を増やし、便の移動がスムーズになり、便通がよくなると言われています。
 そこで、友愛三橋クリニックに通院する透析患者を対象にアミティーザの効果を検討しました。
 
対象と方法
 2013年4月現在、友愛三橋クリニックには118名の透析患者が在籍していました。このうち便秘症治療薬服用患者41名に便秘状況に関するアンケート調査を実施したところ、アミティーザ服用を希望した患者は29名でした。
 この29名に、常用量の半分、1日1カプセルのアミティーザを投与開始しました。アミティーザ投与開始1ヶ月後に同様のアンケート調査を実施しました。
アンケート内容
 アンケート内容を示します。
 冒頭に透析患者には便秘が多いと述べましたが、そもそも便秘とは何でしょうか?排便回数は日に3回から週に3回まで個人差が大きく、単純に排便回数だけでは便秘とは診断できません。そこでスライドに示すように、総合的に自覚する便秘の程度、続いて腹部膨満感、排便の間隔、排便時、排便後の違和感、不快感について、ない・少しある・ある・強くある・きわめて強くある、の5段階で評価しました。
ブリストル排便スケール
 スライドに示すように、便の性状はブリストル排便スケールを使用して調査しました。
継続率
 スライドにアミティーザの継続率を示します。29名中16名(55.2%)が1ヶ月後もアミティーザを服用していました。
中止理由
 アミティーザ中止の理由を示します。中止患者は29名中13名で、44.8%に達しました。主な中止理由は下痢が31%、嘔気、嘔吐が31%、腹痛が13%でした。
 対象
 最終的に16名の患者、男性7名、女性9名がアミティーザを継続し、アンケート調査を回収することができました。平均年齢は69.0歳、透析期間は98.1ヶ月で、原疾患のほとんどを糖尿病性腎症が占めています。
便秘自覚症状
 便秘の自覚症状は、3.2から1.8へと有意に軽減しました。
腹部膨満感
 腹部膨満感は1.8から1.5へ低下する傾向を示しましたが、有意差には至りませんでした。
排便の間隔
 排便の間隔は2.8から2.1へと減少したものの、有意差はありませんでした。
残便感
 排便後の違和感、残便感は1.6から1.5と、全く変化しませんでした。
腹痛
 腹痛も変化しませんでした。
肛門痛
 肛門痛も変化しませんでした。
ブリストル排便スケール
 ブリストル排便スケールは、2.5からから2.8と改善傾向にありましたが、有意差には至りませんでした。
男女別の内服率
 スライドは2012年4月現在の、友愛三橋クリニックにおける男女別の便秘症治療薬の服用率を示しています。男性は69名中18名の26.1%、女性は49名中24名の49.0%と有意に女性の服用率が高くなっています。
 そこで、アミティーザの効果を男女別に比較してみました。
 男女別の便秘
 男性、女性とも改善していますが、特に女性では有意な自覚症状の改善が認められました。
 男女別の表
 いずれの指標も統計学的な有意差はありませんでしたが、女性では排便間隔、残便感、腹痛に改善傾向が認められ、これらが便秘の症状軽減につながったと考えられました。
   男女別のブリストル排便スケール
 男女別ブリストル排便スケールですが、男性で改善する傾向が認められましたが、女性では大きな変化はありませんでした。
 リンの推移
 アミティーザ服用開始時にレナジェル、キックリンまたはホスレノールを服用していた患者12名のリン値です。グラフから明らかなように、リン値は有意に低下しました。
 作用機序
 アミティーザは小腸粘膜上皮のクロライド・イオン・チャネルに結合し、このチャネルが開くとクロライドイオンが腸管内腔に移動し、それに伴い腸液が分泌されます。そこで、電解質の変化が生じないか調べてみました。
(図は日経メディカルより転載)
 NaとClの推移
 スライドはアミティーザ服用開始前3ヶ月と開始後6ヶ月間のNaとClの推移です。いずれも有意な変動を示しませんでした。
   まとめ
 今回、便秘症を合併する透析患者にアミティーザを常用量の半分である1カプセルから開始しましたが、継続率は55.2%と極めて低い値となりました。中止理由は下痢31%、嘔吐31%、腹痛13%でしたが、この出現比率は添付文書の5%以上に発生する胃腸障害の 下痢30%,悪心23%,腹痛6%とほぼ同様の比率でした。アミティーザの添付文書には、血液透析を必要とする重度の腎機能障害のある患者に対して、24μg(1カプセル)を単回経口投与した時の血中未変化体濃度は、定量下限であったと記載されています。しかしながら、アミティーザを透析患者に投与する際には、副作用出現頻度の高さから、投与量の減量や他の便秘症改善薬の中止などを考慮する必要があると思われました。
 継続が可能であった患者では、便秘症状は有意に改善し、特に女性での改善が目立ちました。女性ではブリストル排便スケールに変化はありませんでしたが、排便間隔、残便感、腹痛に改善がみられ、これが全体的な自覚症状の改善につながったと考えられました。
 今回の研究で最も注目すべきことは、便秘症状の改善とともにリン値が低下したことです。冒頭に述べたように、透析患者の便秘の一因にリン吸着薬の副作用がありますが、便秘の自覚症状改善がリン吸着薬服用のアドヒアランス向上につながったと推察されます。別な角度から見れば、大量のリン吸着薬を処方しているにも関わらずリンが高い患者は、便秘の副作用から服薬を自己中止している可能性があることです。便秘は訴えにくい症状であることから、プライバシーに配慮した定期的な紙面でのアンケート調査も有用かと思われます。
 また、クロライド・イオン・チャネルを開くアミティーザを長期に服用しても、ナトリウムとクロールの血中濃度に影響を及ぼさないことが確認されました。
 COI
 このように、アミティーザは透析患者には投与しにくい面もありますが、一部の透析患者には有用な便秘症治療薬と考えられました。
 ご静聴ありがとうございました。
文責 廣瀬 悟
   
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