演題名 超音波所見のシャント穿刺への応用
演者名 友愛三橋クリニック
 中島 譲、加藤あゆみ、市川由美、廣瀬美津代、
 大湯 恵、黒川 仁、廣瀬 悟
友愛クリニック
 矢作佐智子、猪野純子、杉原 仁、下山博身
学会名 第3回埼玉アクセス研究会
開催日 2012年7月29日
開催地 大宮ソニックシティーホール
         
    この発表は最優秀賞を獲得しました。     

目的
 透析スタッフの業務の中で穿刺は重要であり、穿刺者はプレッシャーや不安などのストレスが高い中で、穿刺を成功させなければなりません。
 そこで今回、穿刺の補助にシャントの超音波所見を用い、穿刺に対する有用性を検討しました。
方法
 超音波から得られたシャント血管の走行や内径、狭窄部などを実際のシャント写真と合成し、この合成写真を参考に穿刺しました。
そして合成写真の導入前後の各6ヶ月間で、穿刺ミスの平均件数の推移を比較しました。
友愛三橋クリニックの患者
 対象を示します。
 平均年齢は69歳、平均透析期間は89ヶ月、原疾患はスライドの如くです。
合成写真作製
 合成写真作製には、日立アロカメディカル社の超音波診断装置「prosound α6」と合成写真ソフト「Mac Application のSkitch」をiPad2で作製しました。
合成写真①
 合成写真の実例です。
 写真を正面に見て上部が中枢側、下部が末梢側。赤い矢印が脱血、青が変血部位になります。矢印の向きは穿刺針の方向を示します。
合成写真②
 矢印が複数あるのは、スタッフによって得意、不得意な血管があるので、患者の同意を得た上で、可能な限り選択できるようにしています。
(発表時と画像を変更しています)
穿刺時に合成写真は参考になりますか?
 合成写真作製後、スタッフに「穿刺時に合成写真は参考になるか?」のアンケートを無記名で実施しました。
 その結果、全てのスタッフが「非常に参考になる」または「参考になる」との回答を得たことから、合成写真は有用と思われました。
穿刺ミスの平均件数(6ヶ月)
 穿刺ミスの平均件数です。
 6ヶ月平均で穿刺ミスは6.2件から4.6件と有意に減少しました。
ストレス評価
 ここで心理的ストレスの評価方法を示します。
心理的ストレスは、難易度ストレスと対人ストレスに分けて、ストレスが全くないが1、非常に強いを5とした5段階で評価しました。
 例えば、難易度ストレスはシャントの太さや曲がり方などから感じる、シャント自体の難しさを点数化。
 対人ストレスは穿刺失敗に対する叱責や成功しても「痛い!」などを言われるなど加味した、総合的な難しさを点数化しました。
難易度ストレス分布の推移
 スライドは難易度ストレス分布の推移です。
 合成写真導入前である赤いグラフを見ると点数1が34.1%と最も多く、次いで点数2が28.8%となりストレスが高くなるにつれて減少していますが、導入後は点数2が36%と最も多く、次に点数3の32.7%。
 導入前に1番多かった点数1は3番目に多い結果になりました。
対人ストレス分布の推移
 次に対人ストレス分布の推移です。
 難易度ストレス分布と同様、導入前の点数1の割合が最も多く、ストレスが高くなるにつれて減少していますが、導入後は点数2と3が多い結果になりました。
難易度ストレスの平均点数(6ヶ月)
 難易度ストレスの平均点数です。
 導入前の点数が2.4、導入後は2.6と有意に上昇しました。
対人ストレスの平均点数(6ヶ月)
 対人ストレスの平均点数です。
 導入前が1.9、導入後は2.3と有意に上昇しました。 結果、両ストレスの上昇が見られました。
考察
 超音波所見とシャントの合成写真は、シャントの状態を容易に把握することができ、穿刺部位の決定に有用でした。
 合成写真があると久しぶりに穿刺をする患者であっても、どこの部位へ穿刺すればよいか簡単に確認できます。
 今回の研究で、穿刺ミスの6ヶ月間の平均発生件数は6.2件から4.6件と有意に減少しましたが、穿刺部位の決定が柔軟かつ容易になったことが大きな要因と思います。
 一方、穿刺はいつも成功するとは限りません。血腫によりシャントの走行や内腔が変化することもあります。この場合、無理して同じ部位に穿刺してもミスをする確率は高くなります。いつもと違う部位に穿刺せざるを得ない時でも、合成写真が助けになってくれます。これも、合成写真の導入による、シャント穿刺ミス減少の一因と考えられました。
 また、血管は血栓などにより日々変化するので、必要に応じて超音波検査を施行し、合成写真を更新していくことが重要になります。
 合成写真の導入当時、穿刺ミスの減少とともに心理的ストレスも低下すると予想していましたが、予想に反し難易度ストレスと対人ストレスは共に上昇していました。
 これは合成写真があるがゆえに、穿刺に対する意識の変化があると考えられました。
 まず、難易度ストレスに関してですが、合成写真導入前は点数1が最多であったのに対し、導入後は点数2と3が多くなりました。これは今まで安易に穿刺していた血管が、予想に反する狭窄部位や弁の存在など血管内部の状態を知ることで、より慎重になり、ストレスが上昇したと思われました。
 次に対人ストレスに関してですが、穿刺ミスが少なくなる中で、より高い穿刺成功を患者から求められ、さらにプレッシャーが高まるというスパイラルも考えられました。
結語
 超音波所見のシャント穿刺への応用は、穿刺ミスの削減に有用でありました。
文責 廣瀬 悟
   
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