演題名 エリスロポエチン反応性の検討
演者名 友愛三橋クリニック
 廣瀬 悟
学会名 第15回埼玉中部透析療法懇話会
開催日 2006年7月6日
開催地 パレスホテル大宮
     発表当時は、まだエリスロポエチンの反応性を評価する絶対的な指標は確立されておらず、タイトルのエリスロポエチン反応性にもさまざまな表現方がありました。
 しかし近年では、この発表で用いたエリスロポエチン反応性の式がエリスロポエチン抵抗性指数(Eythropoietic Resistance Index: ERI)として、広く使われるようになってきました。
  ERIは、基本的にはエリスロポエチンの投与量をHb値で割ったものですが、この発表での式のように、さらに体重で割ったものも広く用いられています。
   
         

 2006年4月よりエリスロポエチンが包括化され、我々のようなサテライト透析施設では、より効率的なエリスロポエチン投与法を模索する必要があります。
 そこで、エリスロポエチン反応性に影響を及ぼす因子について検討したので報告します。
 
 博友会に在籍する維持透析患者で、2006年3月に基本データを取得できた529名を対象としました。 エリスロポエチン反応性は、以下の式で算出しました。
  週間EPO投与量 / Hb / 体重
 このエリスロポエチン反応性と各指標との関連を検討しました。
 対象は、男性352名、女性177名で、平均年齢は63.0歳、平均透析期間は105.7ヶ月です。
 原疾患は表に示すごとくです。
 基本データでは、HbおよびHtは日本透析医学会の目標値に維持されていましたが、Ferritinは103 ng/mlと同学会の欠乏基準ぎりぎりでした。
 週間EPO投与量は平均3308単位で、エリスロポエチン反応性は中央値6.6でした

 2006年3月現在の博友会における週間EPO投与量の分布ですが、EPO非使用者は109名、EPO使用者は420名でした。
 EPO非使用者と使用者を比較すると、非使用者は年齢が若く、体格が良く、栄養指標に優れていました。しかし、鉄剤を投与されていないことを反映してか、鉄指標は有意に低い状態でした。
 EPO使用者420名におけるEPO反応性の平均値は8.4、中央値は6.6であり、7.0を境に良好群と不良群に大別して検討を加えました。
 EPO反応性による2群の比較ですが、週間EPO投与量には2倍以上の開きがあります。
 EPO反応性不良群は良好群に比較して、体格が小さくBMIが有意に低いことが分かりました。
 また不良群では、年齢が有意に高く、透析期間が有意に長くなっています。
 不良群は、透析時間と血流量は有意に低い結果となりました。
 血液検査の指標では、不良群はアルブミンが有意に低く、低栄養状態にあることが示唆されました。
  不良群は、クレアチニンも有意に低い状態でした。
  カルシウムとリンに関しては両群間に有意差を認めませんでした。
  不良群は、総コレステロールと中性脂肪が有意に低く、これも低栄養状態を示唆する結果となりました。
   鉄関連指標では、不良群は血清鉄が有意に低下していました。
  また不良群は、FerritinとTSAT(鉄飽和度)が有意に低下していました。
 Ferritinを層別にしてEPO反応性をみたグラフです。Ferritinが50ng/ml未満では反応性は著しく不良で、50以上250ng/ml未満まで徐々に改善するものの、その差は大きなものではありませんでした。逆に250ng/ml以上では反応性は悪化し、この領域では、もはやFerritinは体内鉄の量を反映していないと思われました。
 TSATにおいては、EPO反応性は30%まで直線的に改善し、35%以上ではプラトーになり、EPO反応性の評価においては優れた指標であることが分かりました。
 以上の分析から、EPO反応性からみた鉄の過不足はFerritin50ng/ml、TSAT30%が区切りになると考えられ、4群に大別してEPO反応性を比較しました。鉄が充足していると考えられるFerritin50ng/ml以上、TSAT30%以上をともに満たす群(91名)のEPO反応性は6.2、ともに満たさない群(104名)は10.1で、顕著な反応性の違いが認められました。
 鉄が充足している群の中にも、EPO反応性が良好な群と不良な群が存在します。そこで、上記91名中の良好群と不良群を比較すると、不良群は透析期間が有意に長く、BMI、TP、TC、およびTGなどの栄養指標が有意に低いことが分かりました。
  EPO反応性の性差ですが、女性は男性より反応性が有意に高いことが分かりますが、体重差を反映した結果かもしれません。
  実際の週間EPO投与量でも、女性は有意に高くなっています。
  冒頭にも述べたように、EPOが包括化された現在、EPOを効率的に使用することが要求されています。EPO反応性と鉄指標が密接に関連することは周知の如くですが、残念ながら日本人に適した明確な鉄補給の基準はありません。
 今回の検討から、Ferritin 50ng/ml以上を鉄補充の絶対条件とし、その後はTSATを指標に、30%以上を目標に補充すると、効率的にEPOを使用できると考えられました
 Ferritinに関しては、50ng/ml以上では体内鉄量を鋭敏には反映しないと思われ、50未満もしくは50以上の定性検査として捕らえると臨床応用しやすいと考えられました。
 また、TSATはEPO反応性を予測する鋭敏な指標と考えられました。
 しかしながら、EPO反応性を高めるには鉄の補給だけでは足りず、栄養状態も改善しなければなりません。EPO非投与群と投与群の比較からも、腎性貧血には栄養状態が大きく影響すると考えられます。
 博友会では以上の鉄開始基準で鉄剤を投与していますが、この3ヶ月間で平均EPO使用量は、3308U/週から2784U/週へと減少しています。この間、HbやHtはむしろ上昇している傾向にあります。これまでの博友会では、いかに鉄が不足していたかを示す結果でもあります。
 今後とも、博友会ではこの基準で鉄剤を投与し、EPO投与量の観察を続けて行きたいと考えています。
 
 
文責 廣瀬 悟
   
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