演題名 自作データベースによる注射管理の効果
演者名 友愛三橋クリニック
 中島 譲、杉原 仁、金 成洙、廣瀬 悟
友愛クリニック
 下山博身
学会名 第50回日本透析医学会学術会議
開催日 2005年6月26日
開催地 パシフィコ横浜
 サテライト透析施設の博友会では、日々膨大な量の注射を管理・投薬しています。年間透析件数は8万件に達し、人による注射管理は限界に来ています。
 そこで注射情報を出力するデータベースを自主開発し、注射忘れと注射準備ミスを減らせるか検討しました。
 対象施設は博友会の4施設で、患者数、スタッフ数およびスタッフ一人当たりの患者数は、表に示すごとくです。
 2001〜2004年のヒヤリ・ハット記録から、注射に関するミスを2002年のデータベース導入前後で比較しました。
 注射に関するミスは、注射忘れと注射準備ミスを検討しました。
 データベースは、Microsoft Access 2000を使用しました。
 注射薬のエリスロポエチンやインスリンなどをデータベースに入力し(図1) 、注射情報を透析記録に出力しました(図2)。出力された注射薬にはチェックボックスを設け、注射終了時にチェックすることにしました。
 また、日々の注射一覧表も出力し、注射薬の準備に活用しました(図3)。
 入力画面です。上段にはエリスロポエチン、中段にはインスリン等の定時注射薬を入力し、下段には臨時注射薬を入力します。
 透析記録用紙には、図に示す場所に定時注射薬と臨時注射薬が出力されます。注射薬にはチェックボックスを設け、注射済の確認ができるよう配慮しました。
 日々の注射一覧表も出力するようにしました。
研究1(注射忘れの検討)

 友愛クリニックの2001年(注射情報出力前)総透析回数38020回における注射忘れの頻度を基本データとしました。

 1)友愛クリニックの2002年から2004年(注射情報出力後)の注射忘れの頻度を比較しました。
 2)また、他3施設の2002年から2004年(注射情報出力後)の頻度も比較しました。

研究2(注射薬準備ミスの検討)

 日々の注射一覧表を使用していない友愛クリニックと、使用している他3施設における2004年の注射薬準備ミスの頻度を比較しました。
1)同一施設での推移
 注射情報出力前(2001年)における注射忘れの発生頻度は、1.10件/1000回透析でした。出力後(2002年〜2004年)は、各々0.31、0.41、0.39件/1000回へと有意に減少しました(p<0.001)。(図4)

2)他施設との比較
 友愛クリニック以外の3施設における2002年〜2004年の総透析回数は112699回で、注射忘れの発生頻度は0.39件/1000回と有意に減少していました。(図5)
 注射一覧表を使用していない友愛クリニックにおける注射薬準備ミスは、総透析回数40688回中15件、0.37件/1000回でした。使用している3施設では、総透析回数41596回中3件、0.07件/1000回で有意に減少していました(p<0.01)。(図6)
 博友会の年間透析件数は8万件に達し、人のみによる注射薬の管理は限界に達しています。これまで、注射薬に名札を付けるなどの対応をしてきましたが、満足のいく効果は得られませんでした。
 今回、透析記録へ注射情報を出力したところ、友愛クリニックにおいては、注射忘れの発生頻度を1.10から0.34〜4.1件/1000回へと約1/3に減少させることができました。他の3施設との比較においても、発生頻度を約1/3に減少させることが確認されました。このことから、注射薬のデータベース化は、ある程度システムが異なる施設においても普遍的に効果が得られると考えられました。
 一方、日毎の注射一覧表を出力すれば、確かに注射薬の準備ミスを減少させることができました。しかし、最終的な注射忘れを減少させるには至りませんでした。
 データベース化により注射忘れを1/3に減少させることはできましたが、ゼロにすることはできませんでした。透析患者への注射は回収時の投与が大半であり、この時間帯は低血圧・下肢つり・嘔吐・失禁など常に混乱状態にあります。このような状況下ではデーターベース化とは別の対策も併用しないと、注射忘れをゼロにすることは困難と思われました。
 また、入力ミスをいかに防ぐかも今後の課題です。
 自作データベースを使用した注射情報の透析記録用紙への出力は、注射忘れを約1/3に減少させました。
文責 廣瀬 悟
   
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