演題名 塩酸セベラマーの使用経験
演者名 友愛三橋クリニック
 廣瀬 悟、金 成洙
友愛クリニック
 四宮敏彦、下山博身
友愛中川クリニック
 黒川 仁
友愛桜木クリニック
 倉根理一
学会名 第49回日本透析医学会学術会議
開催日 2004年6月18日〜20日
開催地 神戸ポートピアホテル
 今回、医療法人博友会の4施設でリン吸着薬を沈降炭酸カルシウム(カルタン錠)から塩酸セベラマー(レナジェル錠)へ変更し、臨床効果と問題点を検討したので報告します。
 沈降炭酸カルシウムを服用中で、腹膜透析や腸管切除の既往がない血液透析患者341名を対象としました。ビタミンD製剤(アルファロール、ロカルトロール、フルスタンなど)を内服中の患者が81名、パルス療法(ロカルトロールもしくはオキサロール)施行中の患者が47名含まれています。なお、博友会では全施設ともカルシウム濃度3.0 mEq/lの透析液を使用しています。
 平均2.8gの沈降炭酸カルシウムを約倍量のレナジェル平均4.9gに変更し、血清カルシウム、リンおよびintact PTH濃度の推移を検討しました。

intact PTH:副甲状腺ホルモン
 レナジェル服用患者数を月毎に表示したものです。投与開始1ヶ月以内で投薬数は341名から252名、74%に激減しています。中止理由の大半は便秘もしくは腹部膨満感でした。その後も投薬数は漸減し、半年後には193名、57%まで低下し、1年後には177名、52%となりました。
 半年間レナジェルを継続できた193名の、月毎のカルシウムとリンの推移を示します。カルシウムは投与1ヶ月後より有意に低下し、その後も低下が持続しました。リンは極めて緩やかに低下し、投与5ヶ月後より初めて有意な低下となりました。
 レナジェル変更前と変更後6ヶ月のintact PTHの推移です。スライドのようにPTHは平均242 pg/mlから313 pg/mlへ有意に上昇しました。
 ALPの推移です。PTH上昇の反映と思われますが、ALPは1ヵ月後より有意に上昇しました。
 友愛三橋クリニックでレナジェルに変更した患者54名の分析で、1ヵ月後のカルシウム変化量とPTH変化量の単相関です。カルシウムとPTHは有意な逆相関を示しました。
 次に、ビタミンD製剤を投与中の患者82名(スライド赤)と非投与中の患者111名(スライド白)を比較しました。有意差は得られませんでしたが、ビタミンD製剤投与患者はカルシウム低下が少ない傾向にありました。
 リンの変化量です。ビタミンD製剤投与患者は1ヵ月後より急速かつ著明にリンが低下しました。これに対し非投与患者は1から2ヵ月後はリンが上昇し、その後緩徐に低下しました。
 ビタミンDパルス療法を施行中で、レナジェルが継続できた患者31名の経過を示します。カルシウムは変更1ヶ月後より有意に低下しましたが、リンは低下傾向を示すものの有意差には至りませんでした。
 パルス療法中の患者におけるPTHの推移です。有意差には至りませんが、PTHは上昇する傾向を示しました。
 考案
 半年間レナジェルを継続できた患者は57%で、1日平均内服量は、変更時の4.9gから若干減って4.6gでした。この量は、変更した沈降炭酸カルシウムの1.7倍に相当し、この状況でもリンが漸減したことから、1.5倍程度のレナジェルでも同様のリン吸着効果が期待できると考えられました。
 予想通りカルシウム濃度は低下しましたが、このカルシウムの低下に逆相関してPTHは上昇し、ALPも上昇しました。このことから低PTH血症で低回転骨状態にある患者にはレナジェルが有用と思われます。
 今回の研究で注目すべき点は、ビタミンD製剤服用の有無によりカルシウムとリンの動態が異なったことです。ビタミンD製剤服用者では非服用者に比べて、カルシウムの低下が穏やかでした。ビタミンD製剤服用者では腸管のカルシウム吸収が賦活された状態にあり、腸管に到達するカルシウム量が減少しても、直ちにカルシウム吸収量が減少しないことが要因と思われます。
 一方、ビタミンD服用者はリンが急激に低下し、非服用者は一時的に上昇しました。この原因は不明ですが、ビタミンD依存性リン酸トランスポーター(リンの吸収機構)が関連しているかもしれません。
 レナジェルはパルス療法施行中の患者への効果が期待されていました。確かに、これらの患者群でもリンが上昇することなくカルシウムを低下させることができました。しかし、カルシウムの低下を反映してPTHが上昇する傾向が認められ、短期的には疑問を残す結果となりました。
 パスル療法によるPTHの抑制機序として、in vitro(非生体内・試験管内)では副甲状腺細胞のビタミンD受容体やカルシウム感受性受容体のアップレギュレーション(増加作用)が証明されています。レナジェルにより高カルシウム血症を避けながら充分な量のビタミンD製剤を継続できれば、副甲状腺細胞の質的な異常の是正が期待されます。したがってレナジェルの効果判定には、長期的な観察が必要と考えられます。

 まとめです。
 HD患者341名の沈降炭酸カルシウムを約倍量の塩酸セベラマーに変更しました。
 1、6、12ヵ月後の継続率は、各々74、57、52%で、中止理由の大半は便秘もしくは腹部膨満でした。
カルシウムは変更1ヶ月後より、リンは5ヶ月後より有意に低下しました。
 カルシウムの低下を反映してPTHは上昇しました。
 ビタミンD製剤投与患者は非投与患者に比べてカルシウムの低下が軽度で、リンの低下が著明でした。
 パルス療法施行中の患者においてもカルシウムは低下しましたが、PTHは上昇する傾向を示しました。

 今回の研究結果から、ビタミンD製剤の内服患者のリン低下にはレナジェルが沈降炭酸カルシウムより適すると考えられました。パルス療法施行患者に対しては、長期的な観察が必要と思われました。
文責 廣瀬 悟
   
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