演題名 当院2年間にわたる U型ダイアライザー(PEPA膜) によるETCFの性能 -エンドトキシン除去性能・耐久性および経済効果の分析-
演者名 友愛中川クリニック
 小林 誠
友愛三橋クリニック
 廣瀬 悟
学会名 大宮地区透析療法勉強会
開催日 2004年12月16日
開催地 大宮ソニックシティー
 血液透析療法に使用されるダイアライザーの溶質除去性能や生体適合性は、年々向上していますが、透析用水及び作製された透析液の汚染物質が、逆濾過・逆拡散によって生体に悪影響を及ぼすことが報告されています。このため、透析液の清浄化が重要視されていますが、その品質管理においては継続的な努力が必要と思われます。
 透析液の清浄化にはある程度の経費がかかりますが、現在の診療報酬では水処理などの費用が算定されず、すべて病院側の負担となります。そこで、市販されている高価なETCFの代わりに安価なU型ダイアライザーFLX(PEPA膜)を使用し、エンドトキシン除去性能・耐久性及び経済効果を分析してみました。
 スライドに、透析液の水質に関する九州HDF検討会の基準、及び日本透析医学会の基準を示します。
 透析液の水質を評価するための指標として、グラム陰性菌の細胞膜の成分であるエンドトキシンがあります。エンドトキシンは様々な発熱物質の中でも生物学的毒性が強いため、透析液水質評価の指標として用いられています。また、透析液がエンドトキシンに汚染されやすいこともその理由です。すなわち、エンドトキシンによる透析液の汚染がなければ、その他の要素における汚染もないと推測されています。
 透析液の水質は、透析液中のエンドトキシン濃度が50EU/Lの最大許容値以下にあるか、あるいは10EU/Lの目標値を達成しているかの、2段階の基準により評価されます。
 スライドの図は、理想的な透析液作製フローラインです。図中にある、活水器、ETCF@、 ETCFA、 ETCFB、などは各施設によって設置状況は異なると思われます。 また、透析液回路とカプラーは構造上汚染されやすい造りになっています。
 RO装置からリザーブタンクまでの透析液作製フローラインの消毒は、日常的な消毒の対象とはなっていません。また最近、RO装置も無菌にすべきであるとの考えから、システム全体が消毒される装置もあるようですが、消毒薬によるRO膜の損傷に注意する必要があります。
 透析液供給装置からフローライン末端までの消毒は、各メーカーより過酢酸系・塩素系・酸系・電解水系などあり、各施設機能的に使用されていることと思います。
 エンドトキシン・カットフィルターの交換については、各施設の水質状況により使用期間は異なってくると思います。
 カプラーの消毒は、カプラー内に電解水またはアルコールを吹きかけ洗浄しますが、バイパスコネクターを有する通常カプラーは問題があります。このため各メーカーから、エンドトキシンに汚染されにくいカプラーが開発されています。
 スライドの図は、当クリニックの透析液作製フローラインです。理想的な透析液作製フローラインと比較し、活水器、ETCF@のRO用ETカットフィルター、 ETCFAの透析液供給装置直下用ETカットフィルターなどは施設しておらず、ETCFBをベッドサイドモニターの設置状況により前後どちらか片方のみ設置しています。カプラーは通常のカプラーを使用しています。
 友愛中川クリニックの洗浄・消毒工程を示します。
 月曜日はカルトンC(炭酸カルシウム除去剤)にて、前洗浄30分、薬液洗浄(末端濃度約1700ppm) 20分、封入60分、後洗浄30分を行っています。     
 月・火・水・木・金・土は次亜塩素酸にて、前洗浄30分、薬液洗浄(末端濃度約300ppm) 20分、封入30分、後洗浄30分を行っています。
 この工程に加えて当クリニックでは、B液タンクの洗浄を、月・水・金にRO水で洗い流し、その後に50%イソプロピルアルコールを噴霧洗浄しています。また、カプラーも50%イソプロピルアルコールを、同じく月・水・金に噴霧洗浄しています。以下に根拠を示します。
 スライドにB液タンクを1回洗浄した後のB液と透析液におけるエンドトキシン濃度の経時的変化を示します。このスライドは対数表示にしてありますので、ご注意ください。B液のサンプルはタンクから直接採取し、透析液のサンプルはダイアライザー接続前のLHコネクターより採取しています。B液のエンドトキシン濃度は急激に上昇し、3週後には22042まで上昇しました。透析液もB液と同様に上昇しましたが、上昇幅はB液ほどではありませんでした。
 以上よりB液タンクの洗浄は最低でも週1回以上必要であることが分かりました。
 スライドは、カプラを洗浄しない場合と週1回洗浄した場合の透析液エンドトキシン濃度を経時的に示したものです。サンプルは、コンタミを防ぐためカプラの接続部位を酒精綿で消毒し、透析液を約5分間流した後に採取しました。通常のカプラを使用している限り、週1回程度の洗浄ではほとんど効果がないと考えられます。
 スライドは、月,水,金の透析終了後にRO水でB液タンクとカプラーを洗浄した場合のエントトキシン濃度の経時的変化です。
 週1回洗浄と異なり、エンドトキシン濃度に大きな変動はなく、ある程度安定していました。
 RO水による洗浄単独でも、週3回以上B液貯留タンクやカプラを洗浄すれば、エンドトキシンの濃度の上昇を抑えることが可能と考えられます。
 グラフはRO水の単独洗浄にアルコール噴霧を加えた場合のエンドトキシン濃度の変化です。
 スライド左はB液のエンドトキシン濃度で、B液タンク内をRO水で洗浄した後、アルコールを噴霧し、ブラシでタンク内を洗いました。
 スライド右はカプラより採取したエンドトキシン濃度で、透析終了後にアルコールを噴霧してカプラを洗いました。
 どちらのサンプルも、RO水単独洗浄に比べてアルコール洗浄を加えた方が、エンドトキシン濃度が有意に低下しています。
 スライドは、エンドトキシン・カットフィルターとして、PEPA膜を使用した場合のエンドトキシン濃度です。エンドトキシン濃度は平均24.4 EU/Lから2.7 EU/Lへ有意に低下し、PEPA膜はエンドトキシン・カットフィルターとして十分に機能することが確認されました。
 スライドは、PEPA膜を長期間使用した際のグラフです。水色がカプラからのサンプルですが、11ヵ月後もカットフィルターとして十分機能していると考えられます。
 2003年、友愛中川クリニックではRO装置を交換しましたが、その前後でのエンドトキシン濃度の変化です。サンプル数がすくないため有意差には至りませんが、RO装置の交換もエンドトキシン濃度の低下に効果があると思われます。
 まとめです。
 B液タンクとカプラのRO水による洗浄は、ET低減に有効でした。週3回以上の洗浄が必要で、アルコール噴霧を加えるとより効果的でした。
 PEPA 膜は、 十分なETCF としての性能を有しています。フィルター後のエンドトキシン濃度は平均2.7 EU/Lで、日本透析医学会の基準を満たしていました。 PEPA 膜は、緻密層・多孔質層・緻密層の3層構造のため ETCF として適していると思われます。
 PEPA 膜は、1年間の長期使用に耐えられると思われます。これは、親水化剤 PVP を含んでおらず、洗浄剤や薬液による侵食が少ないためと考えられます。
 さらに、PEPA 膜はETCF に比べ低コストで使用できます。
 最後に、友愛中川クリニックにおける2001年からのエンドトキシン濃度の推移を示します。1997年4月に開院し、8年以上が経過していますが、この間に配管などの交換は行っていません。
 2000年より、B液タンクとカプラーを洗浄開始、2001年にエンドトキシン・カットフィルターを導入、2003年1月にベッド数増床のためRO装置を交換しています。エンドトキシン濃度を各年度の中央値で表しているため、それぞれの改善点とエンドトキシン濃度の低減に若干のずれがありますが、現在では、ETCF前後とカプラーの値を日本透析医学会の達成目標値にすることが出来ました。
 このように、若干老朽化した施設でも、工夫すれば低コストでエンドトキシン濃度を達成目標値に維持することが可能と思われます。
以上です。
文責 廣瀬 悟
   
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