演題名 超音波検査による腎癌スクリーニングの実態
演者名 友愛クリニック 臨床検査部
 矢作佐智子 猪野純子 増田章子
友愛三橋クリニック
 廣瀬 悟
友愛クリニック
 下山博身
学会名 第49回日本透析医学会学術会議
開催日 2004年6月18日〜20日
開催地 神戸ポートピアホテル
 透析患者では腎癌の発生率が高く、本邦では石川(金沢医科大学腎臓内科学教授)らの啓蒙活動により、多くの施設で腎癌のスクリーニングが実施されています。医療法人 博友会でも、超音波検査によるスクリーニングを、2000年から透析患者全員を対象に実施しています。
 対象は博友会の血液透析患者、のべ579名、男性395名、女性184名です。原疾患はスライドに示す通りです。
 スクリーニング方法を示します。超音波の検査頻度は年1回以上とし、検査装置にはGE logic 400を使用しました。今回、統計処理した期間は2000年1月から2004年1月で、検査のべ件数は2279件です。
 ACDK(多嚢胞化萎縮腎)の定義ですが、石川によると、原疾患を問わず萎縮した病腎に、後天性かつ両側多発性に嚢胞ができる病態とされています。何個以上を多発性とするか異論もあるようですが、一腎に3から5個以上とするものが多い、ようです。博友会では、腎嚢胞をnone、single、multiple、ACDKの4群に分類しました。ACDKは一腎に複数の嚢胞を認め、かつ腎萎縮が明瞭に認められる病態と定義し、腎萎縮はエコーレベルの上昇、腎実質の菲薄化、皮髄境界の不明瞭化から、総合的に判定しました。腎サイズについては、嚢胞により影響を受けるので参考項目としました。multipleとは一腎に複数の嚢胞を認めるものの、腎萎縮と判定できない病態を示します。
 各4群の割合です。ACDKは全体の58.1%、multipleは13.7%でした。
 透析年数によるACDKの割合です。ACDKは透析年数が5年を過ぎると急激に増加し、10年以上になると80%以上に合併していました。
 実際の検査では、腫瘤か嚢胞か明確に区別できない場合があります。そこで、博友会ではこれらを腫瘤性病変として取り扱い、スライドのように非典型的な嚢胞Cと結節性の充実性腫瘤Nに大別しました。Cは内部エコーの違いによりC1とC2に分類しますが、透析患者に散見される嚢胞内腫瘤はC2に含まれます。また、Nは血流の有無(血流があると腎癌が強く疑われます)によりN1とN2に分類しています。
 腫瘤性病変の頻度です。腫瘤性病変は 13.4%、305件で、その内訳を右のグラフに示します。結節性充実性腫瘤は16.1%で、追跡を必要とする非典型的嚢胞が多数を占めています。
 精査の結果、腎癌と診断された患者は8名で、男性5名、女性3名です。透析期間は、10年以上が3件でした。博友会の定義によるACDKの合併は2件で、症例数も少ないこともあり、ACDKと腎癌に統計学的な関連は、証明できませんでした。エコー分類は、7件がNの充実性腫瘤でした。これらは、腎実質が健常腎に近く、中心部高エコーが保たれており、腎表面から突出している、という特徴が認められました。また患者Gは C2型のエコー像を呈し、腎癌の確定診断を得るのに長期間を要しました。
 患者Gの臨床経過です。超音波画像のスケールはスライド上で一致させています。2002年7月、嚢胞内壁に一部高エコーを認め、要経過観察としました。2003年2月、嚢胞は増大し、内部に9mmの乳頭状腫瘤が数個、認められました。他院でのMRI診断は多嚢胞腎で、腎癌の確定診断は得られませんでした。2003年12月、さらなる嚢胞の増大と、乳頭状腫瘤の増大、増加に加え、腫瘤内部の血流を認め、2004年1月Dynamic CTにて、初めて嚢胞内乳頭状癌疑いとの診断を得ました。同3月腎摘。病理にてRCC(Papillary Type)と確定されました。
 腎癌と確定された8名のまとめです。博友会では、腫瘤性病変が認められた場合、医師にCTやMRI等の精査をリコメンドし、超音波検査の期間を短縮しています。その結果、4年間で8名の腎癌患者を発見することができ、現時点で転移が確認された症例はありません。このように超音波検査による腎癌スクリーニングは、非常に有用と考えられました。
 今回の統計でACDK合併は、2名にとどまりましたが、これはACDKの定義に影響されていると思われます。超音波でとらえた嚢胞が1つ、でも、組織学的には、微小嚢胞が多発しており、1つでもあればACDKとする意見もあるようです。このようにACDKを定義すれば、当院でも8名中7名がACDK合併となります。
 腎癌の発生時期については不明な例もありますが、長期透析患者のACDKはもちろん、透析導入時からのスクリーニングが重要であると思われました。
 まとめです。
 超音波検査による腎癌のスクリーニングを行いました。延べ2279回の検査で547名中8名が精査で腎癌と確定されました。1名に血尿を認めましたが7名は無症状でした。ACDKの合併は2名でした。
文責 廣瀬 悟
   
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