演題名 博友会におけるシャント手術の現況
演者名 友愛クリニック
 福田裕子 山下たみ子 小林礼子 前田裕美子 吉田公子
 下山博身
友愛三橋クリニック
 廣瀬 悟
学会名 第48回日本透析医学会学術会議
開催日 2003年6月20日〜22日
開催地 大阪国際会議場
 目的です。
 博友会では透析患者の増加に従い、シャントトラブルが増加していますが、要因には高齢化や糖尿病症例の増加も考えられます。最近では、シャント血栓の発症にも関わらず直ちに来院しない患者も目立っています。シャントは患者にとって命綱ともいうべき大切なものであり、日常管理への指導が重要となります。
 そこで、2001年1月から2002年12月の2年間における、シャント関連手術を調査し、分析結果を今後のシャントに関する指導に反映させたいと考えました。
 対象です。
 博友会における2002年12月末の患者数は479名で、男性327名、女性152名、平均年齢65歳、平均透析期間101ヶ月です。
 原疾患は、慢性糸球体腎炎が43%と最も多く、ついで糖尿病性腎症29%となっています。近年における導入患者の原疾患は糖尿病性腎症がトップですが、博友会の患者全体では依然として慢性糸球体腎炎がトップとなっています。
 結果です。シャント関連手術の全体像から説明します。
 2001年から2002年の2年間における手術件数は346件で、シャント関連が301件でした。シャント関連手術301件中40件は大学病院や他施設からの依頼で、病歴が明らかな博友会患者の261件を分析の対象としました。
 手術患者の原疾患を図に示します。
 2年間に複数回の手術を受けている患者は、重複してカウントしました。慢性糸球体腎炎が40%と最も多く、ついで糖尿病性腎症の28%でした。これは先に示したように、博友会では慢性糸球体腎炎が多いことが要因と思われます。
 分析結果です。
 平均して一人の患者が年に何回手術を受けるかを手術率として表しました。

 原疾患別では、腎硬化症が0.357と最も高率でした。糖尿病性腎症と多発性嚢胞腎や慢性糸球体腎炎に差は認められませんでした。
 性別では、男性が0.22回、女性が0.38回と、女性が約2倍高率でした。
 年齢と手術率です。10歳代、20歳代と90歳代は症例が少なく評価できませんが、80歳代の高齢者で手術率が著しく増加していました。
 透析年数と手術率です。一定の傾向は認められませんでしたが、導入1年未満でも0.378回/年と高率であることが注目されます。
 導入後10年までの手術率を糖尿病と非糖尿病患者で比較しましたが、有意な差はありませんでした。
 手術時間と原疾患には有意な差は認めませんでした。
 考案です。
 一般に糖尿病患者はシャントトラブルが多いと考えられていますが、今回の分析で糖尿病患者と多発性嚢胞腎や慢性糸球体腎炎患者の手術率に差はありませんでした。腎硬化症患者は明らかに手術率が高く、これは基礎にある動脈硬化症が影響していると思われました。
 女性患者は男性患者の約2倍手術率が高率でしたが、女性は表在静脈の発達が悪いためと考えられます。このような女性患者には、シャント管理の指導とともに、少しでもシャントを発育させるためにシャント肢運動の励行が必要と思われます。
 また、80代の高齢者は高い手術率を示しましたが、高齢者は判断力低下などによりシャントの自己管理ができないことが多く、家族を含めた指導が必要と思われました。
 透析歴と手術率で注目すべき点は、1年未満でも再手術に至る患者が3人に1人と高いことです。残腎機能の廃絶に伴って血流量を増加させることがありますが、タバチエール吻合などで十分な血流量が得られないため、手術となる患者が認められました。
 また、低血圧や脱水時の対応、シャント血栓発生時の他覚所見を指導されておらず、血栓発生時に直ちに来院せず、マッサージや血栓溶解剤の使用のみで処理できなくなった患者も認められました。この要因として、導入施設でのシャント管理の指導が終了していない、施設により指導内容が様々であることなどが考えられました。
 そこで、博友会では全員来院時にシャント管理の指導を復習させることにしました。
 患者にとって大切なシャントの手術は心身ともにストレスになることであり、心理面でのケアとともに手術を未然に防ぐことも大きな課題と考えられます。今回の調査をもとに改めて日々の透析中のケアだけでなく帰宅後の指導や基本的な観察の重要性を認識させられました。
 結語です。
 1.博友会におけるシャント関連手術を調査した。
 2.腎硬化症患者の手術率は0.357回/年と高かったが、糖尿病性腎症と慢性糸球体腎炎や多発性嚢胞腎患者に差はなかった。
 3.女性の手術率は男性の約2倍であった。
 4.80歳以上の高齢者は手術率が高かった。
 5.導入1年未満の手術率は0.378回/年と高く、適切な教育・指導が必要と思われた。
文責 廣瀬 悟
   
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