薬剤ミニ情報
2007年
 
 
今季インフルエンザ流行について
 今年は、例年より1〜2ヶ月早くインフルエンザの流行が始まりました。今季に検出されているウイルスは、多くがAソ連型です。今季のワクチンは、Aソ連型、A香港型、B型の三種類の混合となっています。これから1月にかけては、A香港型、B型の拡がる可能性があるため、まだ予防接種を受けていない人は早く接種するように勧められています。抗インフルエンザ薬のうち“タミフル”は、服用後の「異常行動」が問題となりましたが、平成19年12月25日に、「タミフル使用者の方が非服用者より異常行動が少ない」、「インフルエンザそのものが異常行動を起こし得る」と厚生労働省での調査結果が報告されました。10代への投与に関して「原則禁止」は現在のところ継続されるようですが、さらに今後の調査の動向が見守られます。(透析患者さんは1回1CaPのみの服用で有効) 他に“リレンザ吸入薬”があり、透析患者さんへも使用できます。両薬剤ともA型、B型インフルエンザウイルス治療薬ですが、効能を比較するとA型では変わりなく、B型ではリレンザの方が解熱までの時間が短いという報告があります。又、インフルエンザの発熱、悪寒、関節痛等の症状と同じような症状に効能を持つ漢方薬の“麻黄湯”が、インフルエンザの初期に使用されることがあります。これから空気が冷たく乾燥し、ウイルスの活動が活発になる時期なので、うがい、手洗い、喉粘膜の乾燥防止のためのマスクの着用、加湿等で予防を心がけましょう。

特殊な作られ方をしている内服薬について
 内服薬には、成分そのままで薬とした素錠、粉薬の他に、次のとおり特に意味があって作られているものがあります。@徐放剤・・・血中の濃度を一定に保ち効果が持続するよう、徐々に薬が溶け出るように作られている。砕いたり、カプセルを外して服用すると薬の濃度が急に上昇し、副作用をおこすことがある。(例:喘息薬テオフィリン徐放剤、降圧剤インデラルLAカプセル)A腸溶錠(カプセル剤もあり)・・・胃酸で影響を受ける成分をコーテイング剤で被膜し、腸で溶けるように作られている。砕いて飲むと、胃酸によって効果を弱めたり、胃粘膜を刺激し胃を荒らすことがある。(例:抗血栓剤バイアスピリン)B糖衣錠・・・薬の成分の苦味が強かったり、吸湿性がある場合に錠剤を糖分の膜で覆い、飲みやすく作られている。(例:抗ヒスタミン剤レスタミンコーワ糖衣錠)Cチユアブル錠・・・高齢者や子供が、水がなくてもかみ砕き、溶かして飲めるよう作られている。(例:抗喘息薬シングレアチュアブル錠) D口腔内崩壊錠・・・高齢者等、嚥下(のみ込むこと)機能が低下した人、水分制限のある人に、水なしで唾液で崩壊し、溶けるように作られている。(例:抗潰瘍剤ガスターD錠)今後、後発品も含め、飲みやすく改良された薬が多く出てくると思われます。薬が飲みにくいと気にされている方は、同じ成分で他の飲みやすい剤型に変更可能な場合もあり、又、錠剤を砕いたり、カプセルを外して飲んでよいのかどうか等も確認しますのでお知らせください。

 
非ステロイド性消炎鎮痛剤についてA副作用
 非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)(商品名:アスピリン、インダシン、ボルタレン、ロキソニン、等)の副作用には、胃腸障害の他、「アスピリン喘息」と呼ばれ、投与後まもなく鼻水・鼻閉等の症状を伴って喘息発作が誘発されることがあります。成人喘息の約10%を占めるといわれ、アスピリンだけでなく他のNSAIDsの内服薬、湿布薬、坐薬でも発症することがあります。その原因は、NSAIDsがシクロオキシゲナーゼ(COX:気管支平滑筋の収縮・弛緩等に関わるプロスタグランジンPGの生成に働く酵素)の働きを抑えることにより、気管支拡張作用をもつPGE2の生成阻害や、気管支収縮作用をもつロイコトルエンの多量産生がおこることによるものと考えられています。又、近年、インフルエンザに感染した後、「インフルエンザ脳症」(けいれんや意識障害発症)になった小児にNSAIDs使用者が多くみられたことから、大人においてもインフルエンザでのNSAIDs使用が控えられるようになりました。薬局ではアスピリン、イブプロフェン等NSAIDsの成分を含む一般風邪薬が販売されていますが、インフルエンザでの使用にはご注意ください。どうしても解熱・鎮痛が必要な場合は、アセトアミノフェン等が比較的安全に使用できる薬剤とされています。2回にわたりNSAIDsの主な副作用を記しましたが、アスピリンは少量投与で冠動脈疾患の血栓予防等に繁用される大切な薬です。上記の副作用にも留意され、安全にご使用ください。
 

非ステロイド性消炎鎮痛剤について@副作用
 非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)は、ステロイドのような抗炎症作用をもちながら、その働きの仕組み、化学構造が異なる薬物群をいいます。NSAIDs(商品名:アスピリン、ロキソニン、インダシン、ボルタレン等)は、次のような仕組みで体に作用(副作用)しています。体の痛みや発熱等の炎症を起こすのは、体内のプロスタグランジン(PG)という物質が作られることが関係しています。PG(現在、AからJまでの種類あり)は、体の色々な組織、器官で作られ、炎症、血圧・腎機能・胃腸機能調節、子宮筋収縮、血小板凝集等に関わっています。このPGの生成には、シクロオキシゲナーゼ(COX)という酵素が働き、COXには、胃粘膜保護、腎機能維持、血小板凝集等、生体の維持に関わるPGの産生に働くCOX-1と、炎症の刺激により発現し、炎症を増強するPGの産生に働くCOX-2のタイプがあります。NSAIDsは、COXの働きを抑えることによりPG生成系の流れを止め、鎮痛、抗炎症作用を示しますが、二つのCOXを同時に抑えるため、炎症が抑えられる一方、COX-1の抑制により胃腸障害や腎障害(腎障害者では腎血流量が低下し、急に透析導入に至ることあり)、血小板凝集抑制(出血傾向)、等の副作用をおこすことがあるのです。又、NSAIDsは、胃部への直接刺激等で胃粘膜を荒らすことがあり、胃粘膜防御剤等が併用されます。近年、COX-2への選択性が高い薬(商品名:ハイペン、モービック)が市販されており、さらに副作用の少ない薬剤の開発が進められています。
 

薬の使用期限・残薬の処理について
 薬の使用期限は、製造してから3〜5年とされていますが、これは薬の包装を開封しないで適切に保存した場合に品質が保障される期限を表しています。処方された薬は使用期限が記載されていないため、粉薬・顆粒の場合は6ヶ月位、錠剤・カプセルは1年位までが使用期限の目安とします。外用薬は包装に記されている期限まで使用可能です。調合された軟膏等は、分離・変質しやすいため、1ヶ月位、調合された水薬は一週間位を目安にしましょう。又、口腔内崩壊錠(ガスターD錠、タケプロンOD錠等)は吸湿性が高く変質が早いため残っているものは廃棄してください。薬を保管する時は、一般的に缶などの密閉容器に入れ冷暗所に、又、冷所保存の薬は、凍らせないよう冷蔵庫の吹き出し口付近に置くことを避けましょう。医師から処方された薬は、現在の症状に対する薬として、厳密には処方日数までを使用期限として使いきるということが前提になっています。透析患者さんでは、リン・Ca関連の薬、カリウム、血圧の薬等が検査値、症状に応じて度々変更されるため、薬が余っていることが多いようです。現在服用している薬と区別がつかなくなり重複すると危険な場合もありますので、以前の薬は捨ててしまうか、医師に伝えて調整してもらってください。(薬が効いていないと判断され、さらに追加されることがあります)一度皆様の薬箱を整理され、家庭で捨てられない時は、薬局又はクリニックへご持参ください。

長時間作用型の貧血治療薬エリスロポエチン製剤の登場
 腎臓では、赤血球をつくるのに必要なホルモンであるエリスロポエチン(EPO)がつくられています。腎臓の働きが悪くなるとEPOが不足し貧血になります。貧血になると動悸や息切れ、めまい、脱力感等の症状があらわれ、又、心臓への酸素供給が不足し長期に心臓に負担をかけると心不全の原因となることがあります。貧血の強い場合は、輸血を必要とする方もいましたが、1990年に遺伝子組み換え技術によってつくられたEPO製剤が発売され、急激な出血以外では輸血の必要がなくなり(輸血によるウイルス性肝炎感染の危険性も避けられ)、透析患者さんの貧血治療が著しく改善されました。 そして今年の7月、従来に比べ持続的赤血球増加作用のあるEPO製剤(ダルベポエチンアルファ:商品名「ネスプ」)が発売になりました。このEPO製剤は、EPOのアミノ酸配列を改変した新しい遺伝子組み換え製剤で、透析患者さんの目標ヘモグロビン(Hb)濃度を11g/dl前後、ヘマトクリット(Ht)値を33%前後に維持できると期待されます。今まで週2〜3回投与の注射を週1回あるいは2週に1回投与に減らすことができますから、注射を打つこと自体の医療事故を少なくするメリットがあります。患者様個々の貧血症状、EPOへの反応性、そしてHb濃度、Ht値等の検査値を見ながら調整し、切り替えられていくものと思われます。

リン(P)について
 リンは、300年以上前、ヒトの尿を蒸発して得た物質の中から発見、ギリシャ語でphosphoros「光を運ぶ物」と命名され、元素記号Pと決められました。リンは、農薬や食品添加物、研磨剤などに含まれていることが知られていますが、生体内では、遺伝情報に関わるDNA・RNAの構成要素、リン脂質、たんぱく質、体内のエネルギー源であるATPなど、に存在しています。成人体内には、500~600gのリンがあり、骨や歯の中にカルシウム(Ca)とリン酸の化合物Ca3(PO4)2の形で85%、軟部組織や筋肉に14%、残り1%は細胞外液中(血液中、組織間液)に分布しています。通常、血清リン濃度は、腸管からの吸収、骨からの融解、腎臓からの排泄に活性ビタミンDや副甲状腺ホルモンが関わり調整されていますが、腎機能が低下するとリンが排泄されず高リン血症がおきやすくなり、食事制限(一日リン摂取量として約800mg)やリン吸着薬の服用が必要になってきます。高リン血症は、極度の筋肉運動やカルニチン欠乏による筋肉からのリン放出、血液の酸性化による骨の融解、加工食品の添加物(ポリリン酸など)に含まれるリンの摂取などが思わぬ原因となっていることがあります。又、リン吸着薬の炭酸Ca(カルタン錠)は、胃酸により分解されCaイオンになりリンを吸着しますが、胃酸分泌抑制剤が併用されると、酸性度が低くなり炭酸Caが分解されにくくなって吸着効果が弱まり血清リンの値が下がりにくいことがあります。 

カルシウムについて
 人の体内のカルシウム(Ca)は、その99%が骨や歯に蓄えられています。(成人体重60kgの人の総Ca量は1kg) 残りの1%は、筋肉、神経、血液などに含まれ筋肉の収縮、神経の伝達や興奮の抑制、血液の凝固など生体の重要な働きに関わっています。血液中のCa濃度の調節には、@副甲状腺ホルモン(PTH)・・・血中Ca が低下すると分泌され、骨からCa を取り出し血中Caを上昇させる Aカルシトニン・・・血中Caが上昇すると甲状腺より分泌され、血中Caを低下させる。B活性ビタミンD・・・腎臓で最終的に作られるホルモンで腸管に作用しCaの吸収を高めるとともに、骨にも作用し骨形成を刺激する 、などのホルモンが関っています。Caが不足するとPTHが作用し、骨からCaが取り出されますが、この状態が続くと骨粗しょう症になりやすくなります。透析患者さんの一日のCa摂取量は600mgといわれていますが、Caを多く含む乳製品などにはリン(P)も多く含まれており、P値の高い人は注意が必要です。(種類によりCa、Pの含有量が違うものがあり、Pの量の少ないものを選ぶ) 副甲状腺機能亢進抑制のため活性ビタミンD剤、リンを下げるため沈降炭酸Caを併用している人は、Caを摂り過ぎると高Ca血症や高P血症が起きやすくなります。また、Ca・P濃度の積が高値だと血管などの石灰化を起こす原因になります。今使用している薬剤(Ca含有のサプリメントを含む)の影響や血中のCa・P濃度に十分ご留意ください。  

大切なリン・カルシウムのコントロールーB活性型ビタミンD3について
 活性型ビタミンD3(VD3)は、ヒトの腎臓で最終的につくられ、過剰な副甲状腺ホルモンの分泌を抑制したり、腸でのカルシウム(Ca)の吸収を進め、骨の代謝などに関係し、リン・Caの調整に関わる物質(ホルモン)です。この活性型VD3は私達の体の中では次のようにつくられます。まず、食物として摂った植物由来のVD2、動物由来のVD3は、そのまま吸収され血液中に入ります。一方ヒトの皮膚では、もともと体の中で作られていたプロVD3が紫外線を受けVD3となり血液中に入ります。この食物から摂ったVD2、VD3と、皮膚で作られたVD3は、血液中に混在し、肝臓に、次に腎臓で代謝され活性型VD3となり初めて生理的な働きをもつことになります。腎機能が低下した人はVD含有のビタミン剤を飲んでも腎臓で十分活性化されないため殆ど効果がありません。現在、透析患者さんには、すでに腎臓で代謝された形の、又は肝臓と腎臓で代謝された形の活性型VD3が薬として使用されています。内服薬ではアルファロール、ワンアルファ、ロカルトロール、フルスタン、注射薬ではロカルトロール、オキサロールが検査結果や症状によって選ばれ使用されます。副作用としては、特にリン吸着剤の沈降炭酸Ca(カルタン)と併用している場合では高Ca血症(不眠、イライラ、悪心等)が起こりやすいので血中Ca濃度の上昇に注意します。症状を感じられた時はお知らせください。また、活性型VD3製剤の副甲状腺機能亢進を抑える効果を高めるには、リンのコントロールができていることが大切です。

  
 
大切なリン・カルシウムのコントロールーA二次性副甲状腺機能亢進症について
 二次性副甲状腺機能亢進症は、透析を長く続けている方に多く、副甲状腺ホルモン(PTH)が過剰に出る病気です。通常、副甲状腺は、血液中のカルシウム(Ca)濃度が低い時にPTHを分泌し、骨からCaを溶出、血液中のCa濃度を正常に保とうと働いています。リンの蓄積、血液中のCa濃度低下、活性型ビタミンD産生の低下、副甲状腺細胞中のビタミンD受容体・Ca受容体の減少等が原因で、PTHの分泌が過剰に進むと、骨がスカスカ(線維性骨炎)になり、骨痛、関節痛、骨折などを起こします。血管の石灰化のようにすぐには現れてこない透析合併症です。この二次性副甲状腺機能亢進を抑えるには、リン・Caのコントロールが必要ですが、最近、副甲状腺細胞にはリン濃度を感知する仕組みがあり、リンが直接PTH 分泌を調節していると考えられ、特にリンの制限が大切といわれています。さらにPTH、血清アルカリフォスファターゼALP が高値を示す等の人には超音波検査で副甲状腺の大きさを測りながら活性型ビタミンD剤の内服、注射等の内科的治療、又は外科的な治療が行われます(PTH は、一般的にインタクトPTH の測定方法で測られ、透析患者さんでは60〜180Pg/mlが維持目標とされています)。又、副甲状腺細胞のCa受容体を活性化させることによりPTHの分泌を抑えるという特性をもつCa受容体作動薬(一般名:シナカルセト塩酸塩)が現在承認申請中で、市販化が待たれます。

大切なリン・カルシウムのコントロール@石灰化の予防
 腎臓の機能が低下すると食品から摂取したリンが尿中に排泄されず、血液中のリン濃度が上がってきます。血液中のリン濃度の高い状態が長く続き、カルシウム(Ca)濃度も高くなるとリン酸Caという物質が析出し、骨以外の箇所に沈着(異所性石灰化)します。すぐ症状が出ないからとそのままにしていると、徐々に血管壁に石灰が沈着し動脈硬化が進みます。足などでは血液の循環が悪くなり、閉塞性動脈硬化症を起こし壊疽により足の切断に至ることがあります。また、心臓の血管が石灰化すると心不全となり生命に危険が及びます。このような状況を防ぐため、血清リン濃度3.5〜6.0、補正Ca濃度8.4〜10.0mg/dlを目安にコントロールされますが、まずは低リン食を進めるとともに、沈降炭酸Ca(カルタン)や塩酸セベラマー(レナジェル)等、血液中のリンを下げる薬(リン吸着剤)の服用が必要になってきます。リン吸着剤は、胃の中でリンを吸着し腸管からのリンの吸収を抑え、リンを低下させますが、食物が上部消化管を通り過ぎてから飲んでも吸着効果が弱いので、食直前や食事中の服用が大切です。一日の食事のリン摂取量に合わせて服用量を配分するのも効果的です。また、沈降炭酸Caを空腹時に飲んだ場合は、Caのみが吸収され血中のCa濃度が上がることがあります。注目されるリン吸着剤としては、Caが含まれない『炭酸ランタン』があり、厚生労働省に製造販売の承認申請が出され2008年頃に市場に出る予定です。 

新型インフルエンザについて
 ノロウイルスによる感染性胃腸炎の流行に続き新型インフルエンザの流行が考えられ、厚生労働省ではその予防対策を整えようとしています。新型インフルエンザは、これまで人に感染しなかったウイルスが性質を変え(変異)、人から人へ感染するようになることで起きます(過去にスペインかぜ、香港かぜ、ソ連かぜ等が流行)。 新型インフルエンザが発生すると、殆んどの人がそのウイルスの免疫を持たないため、急速に広い範囲に流行する可能性があります。近年、東南アジアを中心に、鳥から人への感染が報告されている鳥インフルエンザ(H5N1型)が新型インフルエンザになることが心配されています。鳥インフルエンザの症状は、発熱・咳等に加え下痢症状が伴い、又、結膜炎・多臓器不全に至るものも見られますが、新型インフルエンザの場合は、症状の程度は予測できないようです。診断法は臨床応用に向け開発が進められており、予防は、通常のインフルエンザと同様にうがい・マスクの着用・流行地へ行かないことが重要です。新型のワクチンについては、厚生労働省は、現在、鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)を基に製造したワクチンを確保する計画を進め、又、この治療薬として抗インフルエンザウイルス薬タミフルやリレンザ等の供給確保の対策を実施しています。

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