薬剤ミニ情報
2006年
 
 
ノロウイルスによる「感染性胃腸炎」について
 この冬、新聞等ではノロウイルスが原因とみられる「感染性胃腸炎」の流行を伝え注意を喚起しています。このノロウイルスによる患者が急増しているのは、ウイルスの一部が変異して免疫が働かなくなったためではないかといわれています。厚生労働省の資料によると @感染の原因・・・ウイルスが付いた貝類を十分に加熱せずに食べた場合(例えば、カキは食品の「生食」の規格基準に適合した「生食用カキ」と、それ以外の「加熱加工用カキ」として流通)、調理する人が感染していてその人を介して汚染した食品を食べた場合、感染者のふん便や嘔吐物から人の手などを介して二次感染をした場合、共同施設等で人から人へ飛沫感染などで直接感染する場合等で拡がることがあります。A症状・・・潜伏期間は1〜2日で、嘔吐・下痢・腹痛が2日位続いた後治癒し多くは軽症に経過する、とはいえ抵抗力の弱い高齢者などでは吐いたものを誤嚥したり重症化することがあります。B治療法・・・ノロウイルスに特に効く抗ウイルス剤はなく、脱水症状をおこさないように十分に水分を補給する必要があります。(下痢止めの薬は回復を遅らせるため使用は控えたほうが望ましいとされています)C予防・・・貝類等で加熱の必要な食品は中まで火をよく通す(食品中のウイルスを失活化するためには85℃以上で一分間以上加熱)、食事前やトイレの後に石鹸でよく手を洗う、食器類は85℃ 以上で一分間以上加熱するか次亜塩素酸ナトリウムの消毒薬でこまめに消毒する、などを心がけましょう。

        
効果的な「うがい」の仕方について
 これから風邪・インフルエンザ流行の時期を迎え、皆様にはインフルエンザワクチン接種(今年はA型とB型とに対応)を済まされた方も多いと思いますが、手洗いと「うがい」の実行も大切です。通常、外から帰ってきた時の「*うがい」*は、水道水でも十分に喉のほこりや病原微生物を洗い流せるといわれますが、咽に炎症がある時は殺菌と抗ウイルス効果が認められるポピドンヨード含嗽剤(商品名イソジンガーグル)などが使用されます。今回はこのポピドンヨード含嗽剤での効果的な「うがい」の仕方をメーカーに確認してみました。手順は・・・@石鹸でよく手を洗う。(つくった含嗽剤に雑菌を混じらせないため) A2〜4mlの薬液を60mlの水で薄め、この溶液を「うがい」液とする(量が多いと副作用が生じ、少ないと効果が低くなる) B一回目にこの溶液20mlを口に含み15秒間「ぶくぶく」うがいし吐き出す(口中の雑菌を殺菌)。2回目に溶液20mlで上を向いて、なるべく息継ぎしないで喉の奥に届くよう15秒間「ガラガラ」うがいし吐き出す。3回目に残りの溶液でもう一度「ガラガラ」うがいし吐き出す・・・です。薄めて残った液は、時間を経て使用することのないように捨ててください。このポピドンヨードは、ヨウ素を含んでいるため、ヨウ素に過敏な人、甲状腺機能に異常がある人は使用をさけます。また、アルカリイオン水でポピドンヨードを薄めるとヨウ素の殺菌効果が低下するため水道水で薄めるようにしましょう。

レストレスレッグ(下肢静止不能)症候群とその薬
 透析患者さんに認められる神経症状の異常変化の1つにレストレスレッグ症候群(以下RLS)があります。RLSは、『むずむず脚症候群』ともいわれ、透析を受けている約20%の人にみられるといわれています。症状は、足膝下に虫がはうような不快感・むずむず感・イライラ感があり、また痛みとして訴えられる場合もあります。足を動かすと症状が治まり、止るとぶり返して不眠の原因ともなります。このような神経症状をおこすのは、基礎疾患に鉄欠乏製貧血、糖尿病、慢性腎不全などがある場合といわれますが、原因はよくわかっていないようです。以前、透析医学会で、このRLSに漢方薬の“黄連解毒湯”が有効であると報告され、現在も処方されることがあります。“黄連解毒湯”は、黄連・黄柏・黄ゴン・山梔子という生薬成分からなり、どの成分も苦く、熱をさまし、炎症を鎮める作用があります。不眠・いらいら・二日酔い・かゆみなどに適応をもつ薬です。特にRLSのいらいら感が強い場合は、抗けいれん薬の“リボトリール”や“テグレトール”が効果を示すことがあります。また、最近の発表では、パーキンソン病治療薬のドパミン受容体刺激薬がRLSの治療に有効ということです。この薬は、脳の神経を伝えるドパミンの受容体(受け皿)を刺激し神経の伝達をよくしますが、副作用に、めまい・吐き気・突発性睡眠などがあり注意が必要です。また、カフェインやアルコールの摂取はRLSの誘発因子となるため避けるのがのぞましいです。

ジェネリック医薬品(後発医薬品)について その2
 ジェネリック医薬品(以下GE)は、先に発売された医薬品(以下先発品)の特許期間が切れた後、先発品と同じ成分・効果をもち、品質や安全性について決められた基準を守って作られる薬で、開発費用が小さいため、安い価格となります。厚生労働省は、医療費抑制のためGEの普及を進め、今年の4月より処方箋様式を変え、「後発医薬品への変更可」欄に医師の署名(または記名・押印)があれば薬局でGに変更して調剤できるようにしました。薬局では、『オレンジブック』という先発品と品質が同等とみなされるGEを掲載した本などを参考にして薬を選び、患者様によく説明してから調剤をします。(この場合は、薬局は、どのGEが患者様に渡ったかを医師に伝えます。)このようにGEの使用を進める環境が整ってきましたが、一方で、先発品とGEでは同じ成分でも添加物が異なりそれが人によってはアレルギーを起こす、血中濃度が低く先発品と同じ効果が期待できない、GE同士の注射薬配合変化の資料が不足している、副作用情報が十分でない、先発品の効能・効果がまだ承認取得されていない(例:先発品エパデールの“高脂血症”の効能)などの問題も聞かれます。GEの中には、先発品より剤形、味など飲みやすく改良工夫されたものもあります。今後さらにGEの情報が充実し品質・安全の基準が十分となり安心して使用できるようになることを望みたいものです。

 
新しいリン吸着剤 『炭酸ランタン』 (臨床試験中)
 透析患者さんの合併症の一つである血管の石灰化は血中のカルシウム(Ca)とリン(P)の濃度の積の値の上昇によってもたらされます。この石灰化を防ぐため、Caを含まないP吸着剤の塩酸セベラマー(薬品名:レナジェル又はフォスブロック)の使用が増えてきていますが、強い膨満感や便秘などの症状が出ることがあるため、更に非Al、非Ca性の新しいP吸着剤の『炭酸ランタン』が注目されてきています。今年の透析医学会では、日本人透析患者さんへ『炭酸ランタン』の有効性と安全性を検討した臨床試験の結果発表がありました。『炭酸ランタン』は、食物中のPと結合しP酸塩をつくって便中に排泄され、腸管からの吸収を低く抑え血中のP濃度を下げます(理論的に炭酸ランタン500mgは111mgのPを除去します)。服用錠数少なく、水なしで噛み砕いて服用できるチュアブル錠で、僅かに甘味を感じ飲みやすくなっています。今回の報告では、一日750mg〜1500mgの服用でも十分なPの低下作用が見られ、CaとPの濃度の積の値は下がり、副甲状腺ホルモン値PTHは直接的には変化せず、副作用として嘔吐、むかつき(1500mg以下の服用では軽度)などの消化器症状があるとの報告がされました。『炭酸ランタン』は、胆汁中に排泄されることから、微量でも長期に服用すると肝臓への蓄積や骨への蓄積などの可能性も考え、2,3年後の実用化を目標にさらに試験が継続されるようです。

 
生体リズムと薬
 私達の体は通常、昼も夜も同じ状態で機能しているわけではなく、眠りと目覚め、ホルモンの分泌、神経系の機能など、ほぼ24時間周期で変動する生体リズムを持っています。例えば、血圧は、一般的に夜間に下降して早朝に上昇するパターンを示し、喘息患者さんではヒスタミン(アレルギー原が体内に入ると肥満細胞から放出され気管支収縮などを起こす物質)などが夜間から早朝に上昇することで発作がおきやすくなり、コレステロールの合成は真夜中に亢進し、リウマチは夜間・早朝に痛んでこわばり発症がおきやすい、といった生体リズムがあることが分かっています。このことから実際に薬は次のように調整されます。@喘息治療薬テオフィリン・・深夜から早朝にかけテオフィリンの血中濃度が高くなるように夕方の服用量を多く配分し、調整 A降圧剤・・早朝に急激な血圧上昇をおこすような人には心筋梗塞などの発症を防ぐため、目覚める頃の薬の濃度が高くなるように薬のタイプ・服用時間を調整 B高脂血症薬(スタチン系:メバロチン、リバロ等)・・コレステロール合成に関わるHMG-COA還元酵素を阻害することで効果を発揮しますが、肝臓でこの酵素が高まっている夜間に作用が発揮できるように夕方に服用・・・などです。このように生体内リズムを考慮し、他の疾患においても何時、薬を服用すれば副作用少なく最も効果が得られるか、といった時間的薬物治療が更に進められていくと思います。
 

医薬品の添加剤について
 私達が飲んでいる薬には、その成分以外に薬を見分けやすくする着色剤、量を増して薬の形を整える賦形剤、錠剤を圧縮成形し表面に光沢を与える滑沢剤、薬の変質を防ぐ安定剤・保存剤等の添加剤が使われています。この添加剤は、薬の大部分を占め、医薬品と同じ位に高い品質が求められます。2005年には、「医薬品添加剤・製造品質管理規則(GMP)自主基準審査制度」が作られ、企業の自主管理による品質の管理が求められています。この添加剤の特別な性質を利用した薬の例として「ガスターD錠」があり、嚥下障害のある高齢の方などのため、添加剤の組み合わせ及び製剤化の工夫により、口腔内での溶けやすさと一包化した場合の壊れにくくさを高めています。最近、後発品の使用がすすめられていますが、後発品は先発品と薬効は同じでも使用されている添加剤は同じではなく、徐放剤(薬の成分が少しずつ溶け出し効き目が長く持続できるようつくられた薬)のように、添加剤の工夫により患者さんに便利な特徴をもった後発品が作られることが期待されます。一方、以前、添加物としての抗酸化剤(BHA)が大量に含有されたビタミン剤を服用した妊婦の子供に障害が及んだことがあり、又、薬局で購入する一般医薬品のなかに、透析患者さんには避けていただきたいアルミニウムが添加剤とし含有されていることもあります。今後、添加剤についても十分注意し、お伝えしたいと思います。

 
貧血と薬
 透析患者さんにみられる貧血は、赤血球の産生に必要な腎臓で作られるエリスロポエチン(以下EPO) というホルモンの不足、赤血球に含まれるヘモグロビン(鉄を含む色素と蛋白質がくっついたもので、肺で酸素を受け取り全身の組織に酸素を運ぶ働きをする)を作るのに必要な鉄の不足、尿毒素による赤血球の産生阻害、などが主な原因となって起こります。貧血になると組織に酸素が十分に供給できなくなり、それを補うため心臓に負担をかけ心不全を起こす原因となっていきます。治療には遺伝子組み換え技術によって作られたEPOの注射薬が使用されますが、EPOにより赤血球を作っていると赤血球の原料となる鉄が不足状態になり鉄剤の注射で補われることがあります。また、時々EPOに反応せず貧血の改善が見られないことがありますが、その原因としては、透析不足、感染症、副甲状腺機能亢進、鉄以外の造血の基になる物質(葉酸、ビタミンB12、L-カルニチン)の欠乏、などが考えられます。貧血で平均赤血球容積が明らかに大きくなっている場合には葉酸やビタミンB12の投与を、また、貯蔵鉄の遊離・利用増加に関わるビタミンC(注射)の投与により、EPOの低反応が改善されるという報告があります。さらに栄養の改善に、腎不全用のアミノ酸注射薬も検討されますが、皆様には食事制限があるなかで、上手に蛋白質を摂り、栄養状態をよくすることも大切と考えます。

 
医療用医薬品と一般用医薬品(OTC)との相互作用
 私達は、処方せんに基づいて処方される医薬品(医療用医薬品)以外に薬局・薬店で医薬品(一般用医薬品OTC:Over The Counter)を買い求めますが、その併用によって思わぬ副作用を招くことがあります。今回は併用によってよく問題とされる゛抗コリン作用゛について記載します。抗コリン作用は、副交感神経を抑える作用をいいますが、具体的には心機能亢進、胃腸運動抑制、排尿筋弛緩等の作用があります。医療用医薬品の中で風邪薬(PL顆粒)、花粉症薬、抗アレルギー薬、パーキンソン病薬、抗不整脈薬(リスモダン)等は抗コリン作用をもつものがあり、抗コリン作用をもつOTC薬(酔い止め薬、リン酸コデインを含む鎮咳剤、ロートエキス含有胃腸薬等)を服用する場合は抗コリン作用が増強し、口渇、便秘、尿閉、目の調節障害等の副作用が出ることがあります。また、最近OTC薬として中枢作用の強い抗ヒスタミン剤である塩酸ジフェンヒドラミンを含有している睡眠改善剤(商品名:ドリエル)が発売されています。 もともとこの成分は、かゆみの治療薬のレスタミンや乗り物酔薬のトラベルミンにも含有されていますが、抗コリン作用ももつため緑内障の人や前立腺肥大の人は服用を避けていただく薬です。今の時期、抗コリン作用をもつ花粉症の薬(ポララミン、ザジテン等)を併用することがありますが、特に高齢の方は副作用をおこしやすいのでご注意ください。

健康食品の正しい利用についてA健康食品と医薬品の相互作用
 今回は、健康食品と医薬品の併用で,よく問題にされる副作用、相互作用について記します。 (1)ビタミンK含有食品とワーファリン・・・血液の凝固を促すビタミンKと拮抗し、ワーファリンの抗凝固作用が弱まる。 (2)セント・ジョーンズ・ワート[SJW]ハーブ(抗不安作用を期待される健康食品)と抗うつ薬のセロトニン再取り込阻害剤[SSRI]・・・SJWは脳内にあるセロトニンの活性を高める作用をもつため、SSRIとの併用でセロトニンの作用を強め、錯乱、けいれん等の副作用が出やすくなる。 (3)SJWとワーファリン、ジゴキシン、テオフィリン等の薬・・・SJWによりこれらの薬を代謝(分解)する酵素CYP3A4の働きが進み、薬の代謝が促進され効果が減弱する。 (4)イチョウ葉エキスとワーファリン、アスピリン、非ステロイド性抗炎症剤・・・イチョウ葉エキスは抗血小板作用をもつため血液凝固阻止作用をもつワーファリンなどの薬との併用で出血傾向となる。 (5)カルシウムやマグネシウムを含むミネラルウオーターとテトラサイクリン系抗生物質、キノロン系抗菌剤・・・カルシウム等のイオンと結合し、溶けにくく吸収されにくい物質をつくる(キレート形成)ため、薬の吸収が阻害され薬効が弱まる。 まだ健康食品の安全性、有効性を証拠づける情報が不足していますが、皆様からのご質問にはメーカーに成分・量を確認し、現在処方されている薬との飲み合わせ等を調べ、お応えしていきたいと思います。

健康食品、サプリメントの正しい利用について@分類
 健康の維持や病気の予防にと健康食品、サプリメントの利用が増えています。透析患者さんでも食事制限などのため、不足しがちな栄養成分を補おうと利用される方がいますが、あふれる情報の中で粗悪品の販売などのトラブルがおきています。中には薬との相互作用をおこすものがあるため、飲み合わせ、成分などを調べますので利用の際にはお知らせください。2001年、厚生労働省は健康食品を保険機能食品と一般食品に分けました。保険機能食品には『特定保険食品』(特保)と『栄養機能食品』があります。特保は厚生労働省で個別に有効性、安全性などの審査を受け、「血圧が気になる方へ」、「血糖値が気になる方へ」など特定の健康効果の表示が許可されています。栄養機能食品は、個別の審査を受けていませんが、基準量を含んだ栄養成分(ビタミン、ミネラル)の機能のみを表示することができます。他の健康食品とされるものについては、一般食品と扱われ、効能、効果の表示はできません。サプリメントは、ビタミン、ミネラルアミノ酸、食物繊維などの栄養素を補う食品の中でも特に錠剤やカプセル、粉末などの形をしたものをいいますが、保険機能食品と一般食品の両方あります。これらを利用する時の目安としては、厚生労働省が認可した特保のマークが表示されたものや健康・栄養食品協会が認定した「JHFA]マークが表示されたものが一応信頼できる商品と考えられます。

リン吸着剤の移り変わり
 透析患者さんでは、リンの蓄積による骨の病変や異所性石灰化の進行を防ぐため、リンのコントロールが必要になり、多くの方がリン吸着剤を使用しています。初めリン吸着能が高いとされたアルミゲルは、アルミニウムの蓄積による骨軟化症や脳症の問題から1992年以降透析患者さんに禁忌となりました。替わってカルシウム製剤(カルタン錠など)が使用されてきましたが、ビタミンD製剤と併用すると高カルシウム血症を併発することがあるため、非アルミニウム、非カルシウムのリン吸着剤が待望されておりました。2003年、塩酸セベラマー(商品名レナジェル、又はフォスブロック)が開発され、現在カルシウム製剤との併用、または単独の使用で現在に至っています。塩酸セベラマーは、カルシウムを含まないため高カルシウム血症、石灰化の発症が低いとされ、ビタミンD製剤が使用しやすくなりましたが、腹部膨満、便秘の副作用が出るのが難点です。さらに理想的なリン吸着剤の開発が望まれますが、最近透析医学会でも紹介された 「炭酸ランタン」 La2(CO3)3 (ランタンは金属元素)は、海外で既に承認され、日本では最終段階の臨床治険に入っています。「炭酸ランタン」の特徴は、食物中のリンと結合し、水に溶けにくいリン酸塩(リン酸ランタン)をつくり、これは消化管壁を通らず排泄されるためリンの吸収を低下させます。アルミゲル相当の吸着能があるようですが、副作用の少ない評価 結果をのぞみたいところです。

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