薬剤ミニ情報
2005年
 
 
高齢の方のくすりについて
 歳をとってくると、内臓の機能などが低下してくるため薬の効き方が変わり、副作用や中毒がおこりやすくなります。高齢の方では薬の効き方がどのように変わるのでしょう。「薬の体内分布の変化」・・・薬は血液中では蛋白(アルブミン)と結合している結合型と、蛋白と結合していない遊離型の形で存在しています。薬の効果は遊離型が組織の作用する所へ移り発現することから、この遊離型の濃度によって決まりますが、歳とともにアルブミンの量が減少すると、結合できない遊離型が増え、効果が強く出ることがあります。「代謝・排泄の変化」・・・薬はおもに肝臓で代謝(分解)されますが、肝臓へ流れる血液量が減り、代謝酵素の働きが低下するため、成人量では薬が代謝されにくく効きすぎることになります。また、薬のおもな排泄経路となる腎臓の血液量も減少してくるため、腎排泄性の薬を長く服用していると蓄積され、中毒をおこすことがあります。さらに腎機能が低下している透析患者さんでは、透析で抜けるかどうかなど動態が明らかでない薬もあり、多種の薬が併用される場合は副作用、相互作用に注意しなければなりません。高齢の方が薬を安全に正しく服用されるためには、なるべく少量で、単純な服薬が望まれます。また、飲みにくい薬などは、補助ゼリーの使用や剤形の変更、一包化などへの工夫も必要でしょう。服用しづらく手元に薬をためがちな方、お気軽にご相談ください。

(2)睡眠薬服用のタイミング、他注意点について
 ある調査によると、睡眠薬服用者で睡眠薬の満足が得られない要因は、患者さんの不眠の症状に合った薬が使われていないことや、服用のタイミングがずれていることなどにあると報告されています。睡眠薬が効かないと言っている方の中に、夕食後すぐ横になる人の場合では、「横になる」と「就寝前」を混同し夕食後に睡眠薬を服用していることなどがあるようです。正しい睡眠薬の服用は、多くの睡眠薬は服用後15〜30分で効いてくることから、就寝(布団に入る)15分前位といわれ、30分を過ぎると満足度が低下します。服用したら30分以内には床につくようにしましょう。また昼寝については、15時前の20〜30分位が夜間の睡眠に影響なく満足を得られるようです。睡眠薬服用にあたっては次の点にも注意が必要です。 @飲酒は睡眠薬の作用を強めます。また、睡眠半ばで睡眠を浅くし、中途覚醒をおこすことがあります。 A睡眠薬の連用は依存症を招くのではと心配し、急に服用を中止する人がいますが、リバウンドをおこし、かえって不眠が悪化し悪循環をおこすことになります。このような時は、医師に伝え、指示された量を服用し調整していくことが大切です。 Bベンゾジアゼピン系睡眠薬と他剤併用で睡眠薬の効果が強くなったり、弱くなったりすることがあります。(例:ハルシオンと抗真菌薬のイトリゾールではハルシオンの代謝が阻害され血中濃度fが上昇するため禁) 他科で薬が処方された時はお知らせください。

(1)不眠症のタイプと睡眠薬
 透析患者さんは、透析に特有な痛みやかゆみ、下肢のむずむず感、また日中臥床がちなこと、などが原因で不眠を訴える方が多いようです。夫々もとの疾患の治療をしたり、生活のパターンを見直すことが大切ですが、睡眠薬が使用される場合もあります。時々睡眠薬に関して不安を抱く方がいますが、現在処方されているベンゾジアゼピン(BZ)系睡眠薬は、入眠が自然で依存性や副作用(ふらつき、日中の眠気など)が少なくなっています。不眠を慢性化すると精神機能や心血管障害(高血圧など)の危険を増すともいわれています。眠りが悪く、日常生活に支障をきたす場合は、医師に症状をよく伝えましょう。BZ受容体に作用する睡眠薬は、次のように不眠症のタイプによって使い分けられます。@寝つきが悪い入眠障害の場合:15〜30分で効き始め2〜4時間作用する超短時間型(ハルシオン、アモバン、マイスリー)、6〜10時間作用する短時間型(レンドルミン、デパスなど) A夜中に目が覚める中途覚醒、熟眠障害の場合:12〜24時間作用する中間型(ユーロジン、ベンザリンなど)、長時間型。症状によっては、二剤を組み合わせ使用される場合もあります。BZ系の受容体にはω1、ω2があり、ω1は催眠作用に、ω2は筋弛緩作用に関わります。高齢の方へは、ふらつきによる骨折などを防ぐため、ω1に選択的に作用する(筋弛緩作用弱く、催眠作用の方が強い)マイスリー、アモバンなどが使用されます。

ジェネリック医薬品(後発品)について
 最近、新聞やテレビでジェネリック(GE)医薬品を推奨する宣伝を見かけます。新薬(先発品)は、長い研究期間(10〜15年)と莫大な費用をかけて開発され、最初に発売される医薬品です。そのため特許期間(20〜25年)は独占製造を保護されますが、特許期間が過ぎると他の製薬会社でも同類品の製造が可能となります。GE医薬品(後発品)は、先発品(新薬)の特許期間が切れた後、先発品と同じ成分・効果をもち、品質や安全性について決められた基準を守って作られる薬です。GE医薬品は、先発品の特許の拘束をうけず開発の費用が小さいため、安い価格(先発品の3〜7割)で販売されます。厚生労働省は、医療費抑制のため、処方箋にGE医薬品を含めるよう施策を進めています。すでに皆様が服用されている薬の中にも一部GE医薬品が使用されているものもあります。例)ザイロリック(先発品)とリボール(後発品)など。今、医薬品名を商品名でなく一般名(成分名で共通の名称)で記載する病院が少しずつ増えています。又今後、処方する薬の商品名を書く項目へ「同成分・同効の薬でも可」とか、「代替調剤可」などの文を付け加えられることで、薬局や患者さんがGE医薬品を選べるようにすることなどが考えられています。これから病院側や受け入れ薬局側などの環境を整え、先発品とのバランスもとりながらGE医薬品の使用が進められていくものと考えられます。

新しいかゆみ止めの薬「オピオイドκ(カッパ)受容体作動薬」
 透析患者さんのかゆみの発生原因は、@尿毒素性物質などの蓄積 A皮膚表面の水分の減少による乾燥 B皮膚の炎症に伴い肥満細胞から遊離されるヒスタミン等のかゆみ因子の関与・・・などが考えられ、抗ヒスタミン剤・抗アレルギー剤などが使用されてきました。しかし炎症などを伴わない全身性のかゆみには、これらの薬が効かないことが多く、異なるしくみを持つ薬が望まれていました。今年の透析医学会で新しいかゆみの治療薬「オピオイドκ(カッパ)受容体作動薬」の講演が注目されました。この薬が作られた背景は、モルヒネを鎮痛用量注入したときに出現するかゆみが、オピオイド(脳内にある麻薬様物質)の受容体(細胞表面にあって特定の物質と結合して生体反応を引き起こす部分)を介した中枢性のかゆみによるものと考えられたことです。オピオイド及びその受容体には、μ(ミュー)、κ(カッパ)等があり、モルヒネは、オピオイドのμ受容体に作用する薬(作動薬)です。体内にあるオピオイド濃度を測ると、透析患者さんのかゆみの強い人ほど血液中のμオピオイド/κオピオイドの比が大きいことがわかり、κオピオイドの濃度を高め両オピオイドの比を是正することでかゆみを抑制できるだろうということから、κ受容体に結合し作用するこの薬が開発されることになりました。便秘、眠気等の副作用は少ないようです。これから検証的試験が始まり、発売は少し先になりそうですが早い実用化が待たれます。

新しい薬が生まれるまで
 ひとつの薬が開発され、世に出るまでは10〜20年かかるといわれています。その長い過程は、まず植物や動物、微生物などの中から薬となる可能性のある物質を作り出す基礎研究から始まり、次に動物実験で安全性(毒性)や有効性(薬効)、体内での代謝・排泄等が調べられます。これらの試験をパスしたものに対して、次は実際に人を対象として安全で有効であるかどうかを調べる臨床試験(治験)が行われます。人の試験は三段階に分かれ、第一相試験(フェーズT)・・・少数の健康な人に投与し、吸収・排泄・副作用を調べます。 第二相試験(フェーズU)・・・少数の患者さんに投与し投与量、投与方法を検討します。 第三相試験(フェーズV)・・・多数の患者さんに有効性、安全性、他の薬との比較試験等、厳密な臨床計画を立て行われます。製薬会社は、これらの試験に合格した治験薬を厚生労働省に製造承認の申請を行います。そして厳しい審査を受け合格し、承認を受けたものだけが薬として初めて世に出る仕組みとなっています。さらに発売後も数年間は、その効果や新たに出た副作用などの情報を集めた結果(市販後調査)を厚生労働省に報告し、再審査され薬の評価が行われています。透析に関係する薬では、今までとは異なった新しい作用を示す副甲状腺機能亢進症治療薬のCa受容体作動薬(カルシミメテイックス)が、フェーズV実施中です。

高カリウム(K)血症とその薬
 初夏に入り、スイカやメロン等、カリウム(K)を多く含む果物の美味しい季節です。Kは、神経や筋肉の働きを調整し、心臓の収縮に関係する電解質です。体内に摂取されたKは、一部汗や便中へ、殆どは尿中に排泄されますが、腎臓が悪くなると排泄されず血中のKは高値を示します。通常は透析で正常域に補正されますが、Kを多く含む食事を摂ったり、カロリー不足や消化管出血、感染などが原因で体の組織の細胞が壊れ、細胞内のKが血中に出て高K血症になることがあります。また、便秘になると便中のKの排泄が低下するため要注意です。高K血症の症状(しびれ、胸苦しさ、不整脈)が出るには個人差が大きいようですが、8mEq/Lを越えると心臓が止まってしまうことがあり危険です。高K血症治療薬のカリメート(ポリスチレンスルホン酸Ca)は、腸管内でKイオンを吸着し、そのまま便中へ排泄されることでKの吸収を抑え、血中のKを下げます(カリメート1gで1mEq=40mgのK吸着相当)。他のCaやMg、Alを含む薬剤と併用すると、それらの陽イオンも吸着し、カリメートの効果が弱くなる可能性があるため、沈降炭酸Ca末、カルタン錠・細粒等とは時間をずらしての服用をすすめられることがあります。カリメート末の他にドライシロップ、そしてアーガメイトゼリー製剤があり、飲みやすいものを選べばよいでしょう。便秘をおこしやすいため、ソルビトールやラキソベロン等の下剤を併用し調整されます。

栄養補助食品「コエンザイムQ10」について
 コエンザイムQ10(CoQ10)は、人の心臓や、皮膚、筋肉等あらゆる臓器や組織に存在している物質で、細胞がATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーを作りだすのに必要な補酵素です。細胞の元気の素ということですが、加齢により減少します。食品では、いわしや肉、ブロッコリー等に含まれますが量的に摂りきれず、CoQ10を含む栄養補助食品(サプリメント)での補給が有効と、最近注目されています。その効用は・・・@心臓の収縮力を強め、全身の血流をよくする(もともと心臓の治療薬として使用されています) A抗酸化物質として働き、活性酸素による細胞の酸化が要因の一つといわれる老化を防止、また紫外線による肌のトラブル等を改善 B免疫能を高める・・・等とあります。CoQ10は、油によく溶ける特徴があり、食事直後に摂取するのが効果的です。 CoQ10を含むサプリメント(CoQ10含有量一日60〜100mgの摂取)は、メーカーにより異なりますが、ビタミンE、B1、B6、B12,さらに吸収を高めるため紅花油等が添加されたり、Naやカリウムを含むものがあります。先般、あるメーカーでCoQ10のかわりに医薬品成分のイデベノン(現在承認を取り消されている薬)が含有されていて問題になりました。サプリメントを摂取するときは、色々な効能にまどわされず、含有成分、量、蓄積性、透析で抜けるかどうか等をよく確認する必要があります。お求めになる前には、どうぞご相談ください。

味覚障害と亜鉛
 最近、味覚異常を訴える人が増えているといわれます。味覚には、亜鉛が関わり、亜鉛が不足すると、舌の表面にある「味らい」(味覚のセンサー)の細胞が充分に作れないため味覚が低下してきます。亜鉛は、味覚や脳の働きをコントロールしたり、免疫や性ホルモンの働きを高める大切な栄養素です。体内で生成できないので、食物から摂らなければなりませんが、偏った食事(加工食品の過量摂取)や無理なダイエット等を続けていると亜鉛が不足し、味覚障害がおきます。(血液検査で亜鉛濃度が低いかどうか分ります。) また、服用している薬が味覚異常をおこす原因となる場合もあります。ある種の血圧を下げる薬は、亜鉛と結合し、消化管から亜鉛の吸収を低下させたり、排泄を促して亜鉛不足をおこさせることがあります。治療としては、一時その薬を中止したり、他の薬へ変更されたりします。また、硫酸亜鉛や、亜鉛を含む潰瘍治療薬のプロマック顆粒等で亜鉛が補給されることがあります。亜鉛を多く含む食品には、牡蠣、海苔、肉、ごま、チーズ等がありますが、透析患者さんは、日頃リンが制限されていますので、バランスの良い食事を摂ることが大切です。亜鉛含有の健康食品も販売されていますが、摂りすぎると亜鉛中毒をおこしたり、亜鉛が減っている原因が判らないまま補われ、もとの病気が隠されてしまうことがありますので、味覚異常を感じたら早目に診察を受けるのがよいと思います。

たばこの薬への影響について
 たばこの煙に含まれるタールは、肝臓で薬を代謝する酵素の働きを高め、薬の代謝を早くし、薬の効果を弱めるといわれます。一日20本以上吸う人は、ある種の薬との相互作用がおこりやすいようです。例えば、喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの治療に使われるテオフィリンという薬がありますが、その有効血中濃度域は8〜20μ/mlと狭く、この濃度が低いと薬の効果が弱く、高くなるとテオフィリン中毒(悪心、嘔吐、頭痛、痙攣、動悸等)をおこす危険があります。そのため、この薬を服用している人は、定期的に血中濃度が測られています。(たばこは、この血中濃度を左右する要因の一つです。)たばこを多く吸う人では、喫煙によりこの薬の代謝が進み、通常量では血中濃度が十分に上がらないため、多めに薬が出されます。一方、テオフィリンを服用している喫煙者が急激にたばこを減らしたり、突然禁煙すると、薬の代謝が正常に戻るため、喫煙時と同じ量で飲んでいると薬の効果が強く出て、心臓などに副作用が出ることがあります。(禁煙してどのくらいの期間で影響が出るかは、人によって異なります。)このような場合は、薬の量を減らす必要が出てきますので、禁煙したことなどを医師に伝えてください。(たばこを止めればテオフィリンの量も減量できますね。)現在喫煙を続けている方は、このようなたばこの薬への影響にも留意され、禁煙のタイミングを考えていただければと思います。

 
禁煙補助剤「ニコチンガム」「ニコチン貼付剤」の紹介
 前回は、たばこの害について記しました。禁煙方法も色々試みられる中で、今回は禁煙補助剤について紹介します。長く喫煙してきてニコチン依存度の高い人は、たばこを止めると、ぼうっとしたり、イライラしたり、ニコチンの離脱症状がでてきます。この時、「ニコチンガム」や「ニコチン貼付剤」の禁煙補助剤を使用することで、ニコチンを一時的に補って、離脱症状を軽くし、時間をかけてニコチン量を減らし、禁煙に導いていくことができます。「ニコチンガム」(商品名:ニコレット)は、一般薬局で販売されていますが、ガムの基材にニコチンが含まれ、かむと少しづつニコチンが放出され、体内のニコチン濃度がタバコに比べゆっくり上昇します。3ヶ月をめどに、ニコチンの量を徐々に減らし、最終的に中止にしていきます。次に、皮膚に貼る「ニコチン貼付剤」(商品名:ニコチネルTTS)は、循環器・呼吸器・消化器疾患等の基礎疾患のある人に、医師が必要と判断し処方される製剤ですが、喫煙時のニコチン量より少なく離脱症状を和らげるよう工夫されています。禁煙プログラムのもとに段階的に量を調整し禁煙に導いていくものです。(両製剤とも保険適用がありません)注意点は、これらの製剤を使いながらたばこを吸うと、ニコチンが過量となり、吐き気やめまいがおきることがあるため、喫煙を止めて使用することになっています。禁煙の成功には、強い動機づけが必要と思われますが、これら禁煙補助剤の使用を参考までに。

 
たばこの成分とその害について
 近年、禁煙運動が広がりを見せてきており、皆様の中には「今年こそは」、と禁煙を決意される方もいらっしゃると思います。たばこの煙の中には、人に有害な物質が200種(ニコチン、タール、一酸化炭素、アンモニア、アセトアルデヒド、ニトロサミン等)以上含まれるといわれていますが、そのうちの三大有害物質(ニコチン、タール、一酸化炭素)は次の通りです。(1)ニコチン:吸収されると、末梢の血管が収縮し血液の循環が悪くなり、皮膚の温度低下、皮膚の老化・しわやしみが多くなります。又、血圧上昇、心臓への負担、動脈硬化も進み、ニコチン依存を起こしやすくなります。(2)タール:肺に沈着していき、肺癌発生に強く関わります。 (3)一酸化炭素:血液で酸素を運ぶヘモグロビンへの結合力が酸素の250倍のため、一酸化炭素を吸うと酸素欠乏をおこし、運動能力が落ちます。最近、高齢者に慢性閉塞性肺疾患(COPD)が増えておりますが、その約90%は喫煙が原因といわれています。中高年の方に多く見られ、ただの風邪とか歳をとったせいと見過ごしているうちに、咳や痰、息切れが慢性的に続き、慢性気管支炎や肺気腫を起こし、肺への空気の流れが悪くなり進行していきますので注意する必要があります。又、喫煙は本人ばかりでなく、周りの人にも害を及ぼし、本人が吸い込む煙(主流煙)よりもたばこから周囲に出ている煙(副流煙)の方が有害な成分が多いといわれ、受動喫煙が問題となっています。次回は禁煙対策について。

 
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