薬剤ミニ情報
2004年
 
 
インフルエンザ(流行性感冒)の流行に備えて
 インフルエンザはインフルエンザウイルスによる感染症です。普通の風邪(ライノウイルスやアデノウイルス等による感染で、喉の痛み・くしゃみ・鼻水・咳・発熱も37度台)に比べ、高熱・倦怠感・関節痛等の症状が強く、気管支炎や肺炎などを併発することがあります。予防にはワクチンの接種が有効で、特に免疫抵抗力の低いお年寄りや透析患者さん達に勧められています。インフルエンザワクチンは、体内で免疫が出来るまでに2〜4週間、効力は約5ヶ月間続きます。診断は、発病48時間以内なら、迅速診断キットを使用し、15分位で判定可能になりました。ワクチンを接種してもインフルエンザに罹ることがありますが、発病48時間以内であれば、A型・B型インフルエンザウイルスに効く「タミフル」が有効です。この薬は腎臓で排泄されるため、透析患者さんは、1回1カプセルのみの服用となります。また、この「タミフル」は、インフルエンザに罹った人が居る場合、同居している人への感染の危険を減らすため、今年から短期的予防にも使用できるようになりました。但し、投与の対象が特定の人(65歳以上の人、慢性心臓・呼吸器疾患等のある人)に限られ、保険も適用されません。(透析患者さんでは、予防としての投与量が確立されていません) インフルエンザは、咳やくしゃみに含まれるウイルスを吸うことで感染します。この季節、手洗いやうがい・マスクの着用・室内の加湿などに充分心がけてください。

 
新しいリン吸着剤レナジェル(又はフォスブロック)の使用その後
 今年6月の透析医学会では、レナジェル(又はフォスブロック)が発売され一年程経ち、その使用報告が多く発表されていました。内容は@レナジェルは、血清Caを上げずリンを下げるため、(今までの吸着剤の炭酸カルシウム末やカルタン錠だと、活性ビタミンD剤との併用で血清Ca上昇し、石灰化を招くという危険性あり)副甲状腺ホルモンの過剰分泌の抑制に、活性ビタミンD剤の併用、増量がしやすくなった。 A一方、副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌の低い(骨の代謝の低い)人では、レナジェルの血清Caの負荷が少ないことの刺激により、PTHの適度な上昇がみられた。B脂質代謝にも影響、コレステロールを吸着し血清コレステロールが低下した。C副作用として腹部膨満、便秘が現れ中止になる人もいたが、レナジェルの量を減らし炭酸Caとの併用でリンのコントロール可能。レナジェルは大体炭酸Caの1.5倍の量と同等の効果得られる・・・という報告が載せられていました。参考:リン酸結合試験から(カルタン1錠は104mgのリンと結合) 日頃便秘の強い人や消化管出血のある人は、特に注意が必要です。便秘薬には、便に十分な水分を含ませる浸透圧性下剤のソルビトール液や種々の漢方薬、ラキソベロンなど腸の運動を起こす薬がありますがその人にあったものでコントロールできればと思います。また今後、レナジェルが少ない量、服用しやすい形に製剤化されることものぞみたいです。

消炎鎮痛・解熱剤の飲み薬と外用薬の使用について
 私達は熱や痛みが生じた時、消炎解熱・鎮痛剤(ロキソニン、ボルタレン、ブルフェン、インダシン,アスピリン等)を服用することがありますが、これらの薬は非ステロイド性抗炎症剤とも呼ばれステロイド以外で炎症を抑える薬のグループをいいます。一つの薬で、抗炎症作用(炎症を引き起こす物質プロスタグランジンの生成を抑える)と、解熱・鎮痛の三つの作用を持っています。内科と外科で同じ薬が処方された時は、重複しては飲まないでください。長期に飲むと、胃への直接の作用や、胃粘膜の血流が悪くなり、胃を防御する働きの低下により胃腸障害をおこすことがあります。このような飲み薬の胃への刺激をさけるため、外用の坐薬を使用される場合がありますが、例えばインダシンによる飲み薬と坐薬の消化器系副作用を比較すると、坐薬は5分の1位低いようです。坐薬の使用回数については、5〜6時間位の間隔はあけ、一日2回ぐらいまでとします。高齢のかたでは、薬の効き目が強く出て体温が下がり過ぎたり、血圧が下がる場合もありますのでご注意を。外用とはいえ体内に吸収されるため、繁用すると胃腸障害や発疹、皮がむける、喘息性発作等の副作用の出る可能性もあります。また、この系統の消炎鎮痛の湿布薬は、成分が12時間均一に出て、1日1〜2回の貼りかえで充分です。はがしたあとは、薬が残っていて、赤く腫れることもあり、しばらくは直射日光をさけてください。

高尿酸血症とその薬
 尿酸は、プリン体(細胞の核酸を構成する成分の一つ)の代謝物として肝臓や筋肉などでつくられ、70%位が腎臓から尿中へ排泄されます。プリン体は食品中にも含まれていて、プリン体を多く含む食事(レバー、魚の卵、カツオ、きのこ類等)を摂ったり、大量の飲酒、激しい筋肉運動、ストレスなどにより尿酸は血液中に増えます。正常の範囲を超えた高尿酸血症の状態が続くと、尿酸の結晶が関節周囲に付着し、痛風をおこしたり、また、動脈硬化の原因となることがあります。透析をしている方では、高めの尿酸値が見られますが、症状が出ることは殆どありません。薬剤では、尿酸の生成を抑える薬アロプリノール(商品名ザイロリック、リボール)が使用されます。(他の働き方の異なる尿酸の排泄を促進する薬は透析患者さんでは無効)アロプリノールは、透析で幾らかは抜けますが、腎臓で排泄されるため透析患者さんでは、体内で長く作用し、蓄積します。そのため副作用(皮膚掻痒、発赤、発熱、血球減少、肝障害など)の出る頻度が高く、新聞等にも載り、問題になりました。使用する時は通常量より減量されますが、当クリニックでは痛風の既往がある人や、予防的に必要のある人を除いては、この薬の処方は控えられています。尿酸値の高い方は、充分な透析をし、プリン体を多く含んだ食品やアルコールの過剰摂取、短時間の激しい運動をさけることなどにご留意ください。

薬と上手なつき合いをB 薬の整理・保存について
 今まで処方された薬を飲み残し、薬が余っている方は、次のような点に注意して整理していただければと思います。@カリメート、カルタン、レナジェルなど、検査データーにより増減される薬は、用法どおり服用していないと、さらに増量されることがあります。もし飲みづらいとか、飲むと調子が悪い場合はその旨伝え、薬によっては別の製剤に変えてもらったり、量の調整を検討してもらいましょう。A定期薬は血圧の変動があったり、新しい検査データーが出ると、よく変更されます。以前の薬と混じらないよう、薬袋の処方年月日を見て新旧の薬剤の分別を。間違って飲まないように不明な薬や、いらなくなった薬は持ってきてください。B薬の有効期限・・・粉薬は3〜6ヶ月、錠剤・カプセル・坐薬・軟膏は6ヶ月〜1年くらいを目安に。市販の薬(大衆薬)については、使用期限の記されていない薬は、適切に保管していれば安定で、購入してから3年は使うことが可能なものもあり。保存は、光を遮り、低温の場所で乾燥剤を入れた缶などへ入れておきましょう。C以前処方された薬を同じような症状なので、残っていた薬を飲んでよいかどうか、また、同じ症状の人に飲ませてよいかどうかという場合・・・原則的にはさけます。その症状を引き起こす原因は、以前と異なることがあります。また、同じ症状だからといって家族等に飲ませる場合も、年齢や体質・個々の条件により適切な薬でないことがありますのでご相談ください。

薬と上手なつきあいをA 薬をのむ時間・のみ忘れた時
 薬の服用時間は、その性質・吸収状態・安全性などから検討され決められています。夫々服用時間の意味については、「食前」・・・食事する30分位前の服用。胃の中に食物が入っていると吸収が悪い場合や、食事時に効かせたい場合。(漢方薬、抗結核剤リファンピシン、制吐剤、食欲増進剤、糖尿病用薬等) 「食後」・・・食事をして30分位の間に服用、胃の中に食物が入っていて胃の刺激を和らげます。(鎮痛解熱剤、ステロイド剤等) 「食間」・・・食事して2時間後位に服用。(胃液の酸を中和する制酸剤、漢方薬:漢方薬の成分の多くは、サポニンなど糖のついた化合物で、腸内の細菌によって糖が外され吸収されやすい形になり効果が現れるが、空腹時に飲む方が速く腸に達し効果が出ます)「食直後」・・・食事の直後に分泌される胆汁が薬の吸収に必要な場合。(抗高脂血症薬・抗血栓薬のエパデール、抗白癬菌薬のイトリゾールなど) 「食事中」・・・リン吸着剤など、食物中のリンとよく混じり、リンとくっつき排泄するため時間をおいての服用は効果が落ちます。薬をのみ忘れた時は・・・一日3回服用の場合:気づいて余り時間が経っていない時は、すぐ一回分を服用、次の服用は4時間後位に。次の服用が近い時は一回分は抜く。一日2回服用の場合:気づいた時すぐ服用、次の服用まで5,6時間位あけての服用を目安に。いずれにしても二回分を一度にのまないようにしてください。

薬と上手なつきあいを@ 薬が飲みにくい時
 高齢の方の中には、嚥下(えんげ)機能(食物を口から食道を経て胃へ送り込む働き)が低下し、薬なども飲みにくくなる方がいます。それで時々薬の錠剤を砕いたり、カプセルを外してのんでよいかどうかと尋ねられますが、次に記すような製剤では注意が必要です。@徐放剤・・・喘息薬のテオフィリン錠は、血液中の濃度を保つため、少しずつ薬が放出されるように作られていています。又、血圧降下剤のアダラートCR錠も持続性を持たせるため2層のフィルムコーテイングした錠剤ですが、これらは砕いて服用すると一度に多くの量を飲むことになり、副作用をおこしかねません。A腸溶錠・・・胃の中で溶けないで腸で溶けるよう工夫された製剤ですが、砕いて服用すると胃で溶け、胃酸により効果を失ったり、胃障害をおこすことがあります。B糖衣やフィルムコーテイングした錠剤・・・苦味があったり、においが強い、吸湿性がある等でコーテイングしている薬は、砕くのは不適当でしょう。粉砕する時は以上のような点に注意を。最近では、薬の形や投与の仕方を工夫し飲みやすくした「口腔内崩壊錠」が発売されています。ガスターD錠、タケプロンOD錠などですが、これらの薬は、口の中に入れると舌の上で泡のように短時間で溶け、のみこむことが出来、水分を制限されている場合でも水なしで服用できます。また、補助ゼリーを利用するのも一案です。日頃薬がのみにくく、服用が滞っている方、ご相談ください。

健康食品セント・ジョーンズ・ワートと医薬品の相互作用
 セント・ジョーンズ・ワート(日本名セイヨウオトギリソウ)「SJW」は、聖ヨハネの名に由来し、ヨーロッパから中央アジアにかけ分布している植物ですが、近年欧米でこの含有製品が広く流通し、日本でも健康食品として販売されています。その効用は・・・含有成分のヒペシリン、フラボノイド類、キトサン類は、精神安定・消炎・鎮痛効果があり、昔から外用で、傷・やけどなどに民間療法的に用いられていました。またこの「SJW」ハーブは脳内のセロトニン(脳における神経伝達、脳の活動を高める物質)を増加させ、医薬品の抗うつ剤SSRI(セロトニン再取り込阻害剤)とよく似た働きを示すといわれ、不安やストレスをかかえるうつ症状の改善にと、購入が容易に広がっていました。最近になり、ワルファリン、ジゴキシン、免疫抑制剤、抗てんかん薬などを服用していて「SJW]を摂取すると、これらの薬の分解が早まり、効果を弱めるおそれがあることから、また急に「SJW」を中止するとこれらの薬の血中濃度が高くなりすぎる危険性もあり、薬の添付文書の「使用上の注意」には「SJW]含有食品との併用に関する注意が記載されるようになりました。健康食品の摂取については、日頃皆様には前もって知らせていただくようお伝えしていますが、透析している人たちにとって問題となるリンやカリウム、マグネシウムなどの含有製品以外にも、このような重要な薬に影響を及ぼす健康食品も出回っていますので今後ともご注意ください。

リン吸着剤の働きと飲み方
 食事に含まれるリンの60〜70%は、小腸で吸収され腎臓で排泄されますが、腎臓の働きが悪くなると排泄されず高リン状態をおこすようになります。透析をしている多くの方は、骨や血管への悪い影響を及ぼさないよう血中のリンを下げる薬を服用されています。     
よく使用されているリン吸着剤のカルタン錠、沈降炭酸カルシウムは、胃の中で溶けCaイオンとなり、食物中から離れた腸管内のリン酸イオンと結合し不溶性の化合物をつくり便となって排泄されます。のみ方は、食物中のリンと胃の中でいっしょに混じりあえるように食事中、食直後に服用するのが効果的です。もし食事して時間が経ち服用すると、カルシウムだけが腸から吸収され、血中のカルシウム濃度が増します。またこの薬は胃酸の分泌の多い酸性状態の方が効果を出すため、胃酸の分泌を抑える薬を飲んでいると、酸性に傾いていない状態になり、溶けにくく、リンの吸着力が弱まることがあります。新しいリン吸着剤のレナジェルは、薬のクロルイオンとリンを交換し、この吸着剤の表面にリンを吸着し便中に排泄しリンを下げます。のみ方は、食物が消化管内に存在する食直前、食事中、食直後(当クリニックでは食事中)の服用で。これらリン吸着剤は朝・昼・夜の食事量にあわせ、処方された一日の薬の量の配分を変え、服用のコントロールをされるとよいと思います。

睡眠薬服用の注意について
 睡眠薬には、不眠のタイプに合わせて早く効き短時間作用するものから、ゆっくり効き始め長く作用するものがあります。透析している人では、睡眠薬などは脳への感受性が高く、効果が強く出るといわれていますので量には注意しましょう。現在よく使用されるベンゾジアゼピン系(ハルシオン、レンドルミン、ユーロジン、ベンザリン)、非ジアゼピン系(アモバン、マイスリー)などは安全性が高く、毒性も低くなっているとはいうものの、特に目覚めがよいといわれ繁用されているハルシオンでは、人によっては眠りに入り、途中で覚めた時の出来事を翌朝覚えていなかったり、呼吸抑制がおきたり、他の薬(タガメットやマクロライド系抗生物質)との併用でハルシオンの濃度が上がり、作用が強く出すぎることがあります。一般に睡眠薬服用の注意としては@アルコール飲料は、中枢神経の活動を弱め睡眠薬の作用を強めるため、いっしょに飲むのは避けましょう。A長く効くタイプのものは翌朝までもちこし、ふらつきをおこすことがあるため、車の運転や高所作業には注意を。B睡眠薬を勝手に急に中止すると、かえって不眠の症状が悪化することがあるので、医師の指示のもとに少しずつ量を減らしていったり、間歇的に使用し、中止していきましょう。C手持ちの薬を家族や他の人にゆずることは避けましょう。人によっては効き方が異なり、思わぬ相互作用を起こす危険があります。・・・睡眠剤は効果的に安全に使って、よい眠りを。

糖尿病とその薬D 糖尿病の合併症
 糖尿病特有におきる合併症には、三大合併症といわれる腎症、網膜症、神経障害があります。これらは高血糖が続くことによって細い血管や神経組織に障害をおこすことにより引きおこされます。(1)糖尿病性腎症・・・腎臓にある血液をろ過する「糸球体」の細い血管が、高血糖のため硬くなり、動脈硬化をおこしたり傷つき、老廃物をろ過できなくなり透析が必要になっていきます。(2)網膜症・・・砂糖づけで硬くなった赤血球は、網膜の周りにある毛細血管のなかを通りにくくなり出血し、失明にまで及びます。(3)神経障害・・・糖分の多く含まれた血液は、流れが悪く、細い血管の中をスムーズに通ることが出来ず、神経に栄養が行かなくなります。そのため足をけがしても気がつかず壊死をおこしたり、また、内臓を調節する自律神経の働きも悪くなり、血圧の調節がむつかしくなります。神経障害のしびれや痛みに対しては、ビタミンB12「メチコバール」や、ブドウ糖をソルビトール(合併症の原因物質でもある糖の一部)に変える酵素を阻害し、ソルビトールが細胞内に入るのを防ぐ「キネダック」、血液の流れをよくするプロスタグランジン製剤「オパルモン」「ドルナー」、痛みを感じる神経を鎮める「メキシチール」(本来は抗不整脈剤ですが、少量を使用)などの薬剤が使用されています。これらの合併症を防ぐためには血糖コントロールの徹底を、糖尿病でない方も定期的に行われる血糖検査の値に注意しましょう。

糖尿病とその薬C 最近のインスリン製剤について
 2004年がスタートしました。日ごろ患者の皆様やご家族の方の中に、薬の飲み方、服用しづらく飲んでいないが・・、飲みやすく一包化してほしいなどの疑問・要望がありましたらどうぞお伝えください。大切な薬が効果的に使用されるよう応えていきたいと思います。さて、インスリン注射の話になりますが・・・T型糖尿病の人はインスリン注射が欠かせませんが、分泌が低下したり、その働きが悪くなったU型の人では、インスリン注射を試みることで高血糖を抑え、疲れた膵臓を休ませ、残っているインスリン分泌の能力を回復に向けることがあります。作用時間の差によっておもに@超速効型 A速効型(R) B中間型(N) C混合型(NとRを混合30R・50R) があり、血糖値の状態や一日の変動をもとに使い分けられます。つい最近では一日一回の投与で作用が持続する(ピークのない)持効型溶解インスリン製剤(ランタス)が発売されています。また、器具の方でも、注入器と薬液が一体になっている使い捨てのペン型(ノボリンフレックスペン、ヒューマログ)や、時計型の単位合わせダイヤルになっているイノレットが出て、インスリン注射に抵抗のあった人でも使いやすくなりました。インスリン注射は、病気で食事が摂れなくても注射しないでいると、病気の時はインスリンの働きが悪くなっているため高血糖になることがありますので、中止しないで指示を受けられるようにしてください。

Home