薬剤ミニ情報
2003年
 
 
糖尿病とその薬B インスリンの分泌とインスリン注射薬
 人のインスリンの出方には一日中一定量出ている基礎分泌と、食事に応じてタイミングよく出る追加分泌があります。インスリン依存型糖尿病(T型)は、この両方の分泌が完全に出なくなるタイプで、インスリンを体外から補充しなければなりません。また、インスリン非依存型糖尿病(U型)は、インスリン不足や、食後にインスリンの出るタイミングの遅れなどで血糖コントロールが悪くなりますが、幾らかは基礎分泌の能力も残っていて、必ずしもインスリンに依存しない(インスリン注射薬を必要としない)タイプです。インスリンの分泌がどのように低下しているかは、一人々異なり、インスリン注射薬の種類、量も違ってきます。U型の人も飲み薬(インスリンの分泌を増す薬)等でコントロールが出来なくなるとインスリン注射薬が開始されます。インスリン自体はアミノ酸からできていて、口から飲むと胃や腸で分解されてしまうため、注射剤として補給されることになります。透析に関わることでは・・・体内にあるインスリンの30%は腎で分解されますが、腎不全になるとインスリンの分解が遅くなり体内に溜まるため、インスリン注射をしていた人が透析を始めて数年はインスリン注射を必要としなくなったり、減量になることがあります。でも糖尿病が治っているのではなく、再び血糖コントロールが悪くなることがあるので経過を見ます。新しいインスリン注射薬などについては次回に。

糖尿病とその薬A 血糖降下薬について
 糖尿病には主に2つのタイプがあります。インスリン(血糖を下げるホルモン)を分泌する膵臓のβ細胞が壊れ、インスリンが全く出ないため、インスリンを体外から補給しなければならないT型と、インスリンが完全に不足しているわけではなく、食事による血糖上昇に対してインスリンが適切に分泌されなくなったり、インスリンが作用する臓器でのインスリンの感受性が悪くなるU型の糖尿病です。殆どU型の人が多いようですが、おもにヘモグロビンA1C(過去1〜2ヶ月の平均血糖値を示す)の検査値6.5以下を目標に、食事・運動療法で改善されない場合、補助的に経口血糖降下薬が使用されます。よく処方される飲み薬では(1)ヘキストラスチノン、オイグルコン、グリミクロン・・・すい臓からのインスリンの分泌を促し血糖を下げます。インスリンそのものではありません。(2)グルコバイ、ベイスン・・・小腸で、砂糖などの二糖類からブドウ糖の単糖類に分解する酵素の働きを抑え、糖の吸収を遅らせ食後の血糖値の上昇を抑えます。この薬を服用していて低血糖を起こした場合は、砂糖ではなくブドウ糖を摂ることが必要です。風邪や下痢などで食事が摂れない時は、血糖値がコントロールしにくくなり、薬の量の調整が必要になることがあります。勝手に判断しないで、必ず医師の指示をうけてください。また、市販の風邪薬には血糖値を下げるような成分が含まれていることがあり注意が必要です。

糖尿病とその薬@ インスリンの分泌について
 近年糖尿病になる人が増え、透析導入の原因の第一位となっています。糖尿病は、すい臓から分泌されるインスリンの働きが不足し、血液中のブドウ糖(血糖)が異常に多くなる状態をいいます。健康な人では、インスリンは、食後、ブドウ糖が体に吸収されるとすい臓から分泌され(追加分泌)、ブドウ糖を筋肉や肝臓、脂肪組織に取り込み血糖を下げるよう働きます。糖尿病の初期では、インスリンの分泌が低下し、「食後高血糖」の状態となります。またインスリンは24時間持続して一定量分泌(基礎分泌)されているのですが、この分泌が低下すると、空腹時でも血糖値が上がり「空腹時高血糖」の状態となり進行していきます。こうして高血糖が続くと細い血管が障害され、網膜症・神経障害(しびれ、痛み、足の壊疽などの原因となる)・腎症(腎臓の毛細血管が硬く、狭くなり、血液をろ過する膜に障害がおき腎臓の機能が低下)などの合併症がおきてきます。高血糖になるのは、遺伝的な体質に加え、肥満や運動不足等が原因でインスリンの効き方が悪くなるようです。糖尿病を予防するには、インスリンが必要以上に多く分泌されないような生活習慣(食後の適度な運動。食事は一定の間隔で摂り、一度に多く食べないなど)をつけることが大切です。食事療法・運動療法を続けてもコントロールできなくなると、血糖を下げるため、内服薬やインスリン注射薬の治療が始まりますが、薬等については次回にお伝えします。

よく使用されている便秘薬
 透析している方達では、連用している薬(カリメート、カルタン、レナジェル等)の影響や、透析で腸管内から水分が吸収され過ぎて硬い便になったり、大腸の収縮が弱く大腸の内圧が低いため、内容物が通過できなくて起きる弛緩性便秘の人が多いようです。おもな便秘薬のタイプを示しますと@刺激性下剤・・・プルゼニド、アローゼン等(センノシドを含む薬):腸壁を刺激し、腸の動きを活発にして排便を起こしますが、長期使用すると効きにくくなります。ラキソベロン:大腸の水分吸収を抑え、ぜん動運動を促します。習慣性になりにくい薬です。A浸透圧性下剤(糖類下剤)・・・Dソルビトール:カリメート等服用者に効果的。腸管から吸収されにくい糖(糖尿病の人への血糖の影響は少ない)で、浸透圧物質となって腸管内に水分を引きよせ排便を促します。B直腸刺激坐薬・・・ 新レシカルボン坐薬(炭酸水素ナトリウム配合):肛門から挿入すると直腸内で炭酸ガスを発生し、その刺激で排便をおこします。C漢方薬・・・潤腸湯(当帰・地黄・大黄含有):体液が欠乏して皮膚や粘膜が乾燥傾向あり、腹力の弱い人の便秘に、腸を潤し穏やかに効きます。大建中湯(山ショウ・人参・乾キョウを含む温熱・滋養剤):腸のぜん動不安を鎮め、腸の働きを活発にします。症状の強い場合は、これらの薬が幾種類か併用されています。

便秘をおこしやすい薬
 透析している方は、除水・水分制限・食物繊維摂取の不足などが原因で60%近くの人が便秘傾向にあるといわれています。さらに次に示すような薬剤服用により二次的に便秘になることがあります。@副交感神経を抑える薬・・・咳止めの薬(メチルエフェドリンやジヒドロコデインを含むもの)や、一部(市販薬)の胃腸薬の中に入っているロートエキスやアルミゲルは腸の働きを抑えます。A抗うつ剤、抗不安剤 B肩こりの症状を和らげる筋弛緩剤 C血圧降下剤(Ca拮抗剤)など・・・。他に、カリメート(カリウム吸収抑制剤)は水に溶けないイオン交換樹脂ですが、ざらざらしたものが腸に溜まり、通過障害をおこし便秘がちになります。また、最近発売されたレナジェルは、小腸でリンを吸着し便中に排泄されますが、やはり樹脂ですのでプラスチックのように水に溶けず、飲む量も多いため、大腸で水分が吸収されると固まりになり便秘をおこしたり、人によっては、水分を引き込み下痢をおこす人もいます。さらに前記のような薬が併用されていると便秘症状が強く出るため、中止や減量の調整が必要になることがあります。レナジェルは、長期に見て石灰化などの合併症を少なく防げるリン吸着剤です。合った便秘薬を使うことで軽減し、落ち着いてくることもあります。次回は便秘薬のお話を。

一般風邪薬による間質性肺炎について
 先般、新聞等に一般用の総合風邪薬で間質性肺炎を引き起こすことがあるという記事が出ました。厚生労働省は42品目(パブロン、ルル、ベンザ、エスタック・・・他)について、使用上の注意に副作用として載せるよう指示しています。どの成分が原因となるのか、製薬会社は「特定できない」といっていますが、おそらく解熱鎮痛剤の成分の中のイブプロフェンや、咳止め成分のエフェドリンなどではないかといわれています。間質性肺炎は、肺胞と肺胞の境目にある間質に炎症がおきることをいいますが、肺胞の壁が傷つき、ひきつれ、肺が固く縮んでしまいます。風邪薬服用後、空咳が続き、息切れ、呼吸困難、熱が下がらないといった時、服用を続けないで中止し、早く医療機関を受診することが大切です。また、間質性肺炎の他にも、ステイーブンス・ジョンソン症候群(皮膚粘膜眼障害)といった皮膚粘膜が火傷状態となる重症の副作用が出ることがあります。稀なことですが、これらの副作用は、ごく一般の身近に使用する薬でおこりえます。透析している方達は、クリニックの処方薬以外で一般薬、健康食品を飲まれる時には、日頃こちらへご相談いただいていますが、体調が変わった時は早めにお知らせください。

薬の効き方に個人差があるのは?
 同じ薬でも人によって効き方が違いますが、そのおもな原因は、わずかな遺伝子の違いによることがわかりかけています。殆どの薬の代謝(肝臓で分解されたり体外に排泄されやすいかたちに変えられること)には、おもにCYP(チトクロームP450)というタンパク質の酵素が関わっています。このCYPには、20種位の仲間(分子種)があり、例えば眠剤のハルシオンの代謝には、CYP3A4という仲間の酵素が関わっています。もしこのCYPタンパク質の設計図であるCYP遺伝子に変異がおき、活性のあるタンパク質が欠けてしまったりしていると、薬の働きにバラつきがおきてきます。例えば抗凝固薬のワーファリンの代謝にはCYP2C9が関わっていますが、この酵素の活性が遺伝的に低い人では、通常の量よりずっと少量で凝固時間をコントロールできます。これからは一人一人に合った薬と量をきめられるオーダメイド医療が目指されようとしています。それぞれの薬がどのCYPの仲間で代謝されるかがわかり、患者さんがあるCYPの仲間の欠損者でないかなど、前もって遺伝子診断で調べられるようになると、起こりうる副作用も予測でき、薬の調整が可能になるようです。

新しいリン吸着剤・レナジェル錠250mg(一般名:塩酸セベラマー)発売について
 腎臓の働きが低下すると、リンの排泄が悪くなり、血液中にリンが蓄積しやすくなります。高リンの状態が続くと、骨の病気・痒み・心臓の合併症がおきることがあります。今までリン吸着剤として、主にカルシウム製剤(沈降炭酸カルシウム、カルタン)が使用されてきましたが、この製剤は、活性ビタミD剤などが併用されていると血液中のカルシウム濃度が上がり過ぎ、リンとカルシウムのコントロールが困難になることがあるため、カルシウムを上げないでリンを下げる薬が望まれていました。以前にも紹介しましたが、そのリン吸着剤「レナジェル錠250mg」がようやく六月下旬に発売されます。特徴・・・@カルシウムやアルミニウムを含まないイオン交換樹脂。食物中のリンと結合しそのまま糞中に排泄し、カルシウム濃度を上げないでリンを下げる。A過度のカルシウム製剤摂取による心臓の血管石灰化が進むのを防ぐ。B胆汁酸を吸着し、血中のコレステロール低下。副作用としては、便秘や、ある薬剤との併用で、その薬の吸収を妨げ効果を弱めることがあり、間隔をおいて飲むといったこともあります。皆様には、症状や、リン、カルシウムの濃度により処方が検討されると思います。

術前における抗血栓剤服用の休薬について
 血液の中には、赤血球・白血球・血小板の3種の血球がありますが、そのうちの血小板が血液の中で集まって固まると(凝集)、血栓を作り血管をつまらせます。抗血栓剤の中にはこの血小板の凝集をおさえ血液を固まりにくくする薬(バイアスピリン、バファリン81mg、パナルジンなど)があり、一般的には脳血栓や心筋梗塞発症の予防に用いられています。血液透析ではシャントが詰まったり、透析回路内で血液が固まるのを防ぐためにも使用されています。手術や抜歯の予定がある時は、これらの薬を服用したままでいると、手術中の出血が止まりにくくなるため、前もって一定期間、服用を中止することがあります。服用を中止し薬の作用がなくなるまでの時間は各薬によって異なり、アスピリン、パナルジンでは、その効果は7〜10日持続するため、手術の7〜14日位前、プレタールは3〜4日位前を目安に休薬を。また、抗凝固薬として血栓を防止するワーファリンについては、5〜7日間位の休薬がのぞましいといわれています。ただし、一時服用を中止することで体に悪い影響があってはならないので抜歯の時などは医師に相談し、指示を受けてください。また、薬局で購入できる鎮痛剤の中にはアスピリンを含むものがありますのでご注意ください。

花粉症の時期を迎えて
 スギ花粉の飛散量がピーク時期を迎えました。花粉症は、アレルゲン(アレルギーを起こす物質)の花粉と鼻の粘膜や結膜の肥満細胞の表面にあるIgE抗体(抗原の侵入に反応して体内に出来た物質)の反応で、炎症性物質(ヒスタミン、ロイコトリエン、トロンボキサンA2など)が放出することによっておこります。ヒスタミンは鼻の粘膜を刺激し、くしゃみや鼻水を分泌し、鼻粘膜が腫れる鼻づまりは、特にロイコトリエンが関わります。それぞれ拮抗する抗ヒスタミン薬や抗ロイコトリエン薬など、眠気や自動車運転などへの影響の少ない抗アレルギー薬が次々と開発されています。花粉症による眼のアレルギー対策では・・・処方薬にはありませんが、薬局で売られている防腐剤の入っていない使いきりタイプの人口涙液での洗眼が勧められます。コンタクトレンズを着けている人は、レンズの上に抗原が着きアレルギーを起こしやすいため、眼がねの使用が良いのですが、レンズを着けての点眼薬使用については、殆どの薬はレンズをはずし、点眼5〜10分後に装着するよう注意されています。症状の強い人は、早めに医師の診察を受けましょう。

かぜ薬・解熱鎮痛剤服用の注意
 寒さが増し空気が乾燥するこの時期、かぜやインフルエンザが蔓延していますが早くもインフルエンザ特効薬のタミフルやリレンザが不足状態になっています。インフルエンザは突然に高熱を発し頭痛や関節痛などの全身症状が出ます。高齢の方では、肺炎など細菌の二次感染をおこしやすく、その予防に抗生物質が処方されたり解熱鎮痛剤が使用されることがあります。以前、ジクロフェナクナトリウム(ボルタレン)を使用し急激な解熱で血圧低下に伴うショック症状がおき問題となりました。本来熱の上昇はウイルスに対する防御反応と考えると強い解熱鎮痛剤の安易な使用はさけたいものです。医師の指示をよく聞いてください。また、市販のかぜ薬は自己判断で飲むことがありますが以下の点に注意を。消炎剤の塩化リゾチームが含まれている薬は卵白アレルギーの人へは禁、トラネキサム酸配合薬は止血作用があり血栓のある人は注意を。鼻炎薬(コンタックなど)に含まれる塩酸フェニルプロパノールアミンは交感神経を刺激する作用があり、心筋梗塞や脳出血との関連が報告されていますので過量、長期服用は控えましょう。予防にうがい、手洗い、適度な室温と湿度を保ち、免疫力を維持する食事を摂りましょう。かぜに罹患したら安静と保温が大切です。

高リン血症治療剤・カルタン錠250、カルタン細粒83%の剤型追加
 新しい年を迎えました。今年も透析に関連する新しい薬が出てきますがその都度お伝えしていきます。昨年12月にはリン吸着剤として使用されていたカルタン錠の剤型が追加発売されています。今までは「カルタン錠500」(1錠600mg中沈降炭酸カルシウム500mg含有、溶け出すのを早くするための崩壊剤や結合剤の添加量として100mg含有)が処方されていましたが、直径10mm、厚さ5mmと大きい錠剤のため服用しにくいといわれる方もいました。このたび「カルタン錠250」(直径8mm)、「カルタン細粒83%」(細粒600mg中、沈降炭酸カルシウム500mg含有)が追加され、小さい錠剤のもの、また細粒のものへと変更が可能になり細やかな調整が出来るようになりました。皆様の服薬しやすい剤型へ処方されると思います。なお、カルタン(沈降炭酸カルシウム)は他の物質と結合しやすい性質があり、ある抗生物質(テトラサイクリン系、ニューキノロン系)等と併用するとお互いに吸収が低下し効果が弱まることがあります。時間をおいての服用がのぞましいです。

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